日本百名山「皇海山」(船石峠駐車場より松木渓谷経由栗原川林道下山)

今回の山行で雪面を滑落しました。
己の力量・技量を顧みない、無謀な山行となりましたので記事にしようか迷いましたが、松木渓谷の素晴らしさをお伝えしたかったのと、私の愚かな行いを反面教師としてご参考にしていただくべく、記事にしてみた次第です。

山行記録

◎2013.5.7(Tue) ~ 2013.5.8(Wed) 天気:晴れ後雪(5/7)、晴れ(5/8) 気温:-0.8~14.5℃

◎コース:
1日目:07:08船石峠駐車場-07:47赤倉-08:14銅親水公園-09:05大ナギ沢出合-10:43三沢出合-13:12ニゴリ沢分岐-15:14国境平(行動時間:8時間6分)
2日目:05:37国境平-08:59皇海山山頂-10:28不動沢のコル-11:50二俣-12:18不動沢コース登山口-16:12栗原川林道途上 (行動時間:10時間35分)(延べ行動時間:18時間41分)

◎標高差:約1450m

今回は、「山と渓谷」2010.11号で特集されていた”脱メジャーコース登山”掲載ルート中、「松木渓谷」にチャレンジすることにする。

このルート。
なにしろ渓流が美しく、誌面を拝見した私は松木渓谷に魅了され、当時、喰いつくように記事を拝見していました。
当初、このルートを”歩いてみよう!”、と具体的に検討していたのは昨年6月頃のこと。
私にとって、数少ない連休を利用して計画しましたが、台風の影響により断念。
次に計画したのは、同年10月上旬。
昨年は残暑が長引き10月に台風上陸という、私にしてみれば気が狂わんばかりに”異常”な状態で、やはり計画は台風により断念。
その次のチャンスが訪れた時は、既に皇海山は雪に閉ざされていた。

例年どおりであれば、ゴールデンウィークの時期には残雪は残るものの入山者は多く、「松木渓谷」三度目の計画をゴールデンウィーク明けに予定する。
今年の降雪状況は例年どおりではない。
4月中旬に至っても長野辺りでは里でも雪が降る。
それでなくても、今シーズンはガッツリ雪が降った。
当然ながら、残雪も多いはず。
昨雪山シーズンでは、12本爪アイゼン、アックスをそれなり使いこみ、これらの道具に慣れもした。
これらの道具の使用に少々自信を持った私は、雪があるのを承知で現地へ車を走らせる。

まずは、松木渓谷の登山口である「銅親水公園」に、ザック等の荷物をデポ。

後、今回の山行の予定ゴール地である「船石峠駐車場」へ車を駐車するべく車を走らせ、船石峠駐車場到着は07:05。
船石峠駐車場

ぼちぼち準備して出発。

1日目

07:08船石峠駐車場

船石峠駐車場

登山靴に履き替え、すぐ、登山口へ向けて出発。
荷物は先ほど登山口にデポしてきたので、今は空荷だ。

ただし、食材の一部を途中のコンビニで調達し、それをザックに仕舞忘れ、ビニール袋を手にぶら下げつつ林道を降る。
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また、GPSをザックに残したままだ。
已む無く、船石峠駐車場→銅親水公園間のログを取るべく、山旅ロガーを起動させる。
結果、この間のログは少々データが荒いです。

ろくにストレッチもせずに出発した。

この緩い坂の降りを準備運動にみたて、時折、ジグザグに切られた道をショートカットしつつ、小走りで降る。
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この道はアスファルト舗装されているものの、景色が良いので気分よく降ることができる。
とはいうものの、長く続くと厄介だ。

なんとか、このアスファルトに飽きる前に里に降りることができた。
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家並みが、渡良瀬川沿いに所狭しと立ち並び、私にしてみればこのような景色は見慣れず、異国の地に来たような錯覚が生じる。
渡良瀬川に架かっている橋を渡れば、そこが”赤倉”。

07:47赤倉

赤倉

ここより沢の遡上が始まる。
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その出足は、既に稼働していないのか?死んだような精錬所を横手に見ながら緩い坂を登る。
しかし、精錬所内では人影が動いている?

いや~。

それにしても不思議な光景だ…。
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まるで”もののけ姫”に出てくる「たたらば」のようだ。
渡良瀬川の川岸は荒々しく削れている。
精錬所は錆び、朽ち果てようとしている。
山腹はあちこち削られ、樹木は少なく、山腹が武骨な姿を晒している。
どうも「戦場」を連想させられる。

ここは明治時代の足尾鉱毒事件の現場だ。
私はその事件の詳細について知らず、”授業でそんな事件があったと耳にしたかな…?”という位の認識だ。
しかし、この景色はその事件の凄惨さの一端を、物言わず物語っているような気がする。

進行方向へ目を向けると、松木渓谷への入口が見えた。
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08:14銅親水公園

銅親水公園

時計の気温計で14.5℃。

無事、デポした荷物を回収。
GPSを起動し、山旅ロガーを停止させる。

そそくさと準備を済ませ、さっそく入山。
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今回予定のルートは、ここより松木渓谷を経由して国境平へ至りピバーグ。
翌日、皇海山を登頂し、六木班峠を経て銀山平へ下山。
そんなルートを予定しています。

この松木渓谷について。
ヤマレコで様子を伺うに膝まで浸かる”渡渉”が避けられない様子。
その対策として、沢靴がザックにぶら下がっている。
また、ルート途上に控える「鋸山」について。
この山の北斜面は傾斜がキツク上部は鎖場で、未だ残雪がガッツリ残っていることが予想される。
その対策としてアイゼン、アックスがやはりザックにぶら下がっている。

そんなことで、本日の装備は水陸+雪+山中泊仕様。
いつもに比べ少々ザックが重い…。

現在、この渓谷の樹木を再生するべく植林事業が盛んに行われている様子だ。
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このように山腹を段々畑のように造成し、段に植林をしている。
このような光景があちこちにある。

他。

精錬所は稼働している雰囲気はないものの、採掘は現在も行われている様子で、ダンプの往来は意外に多い。
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途上に立っている足尾に関するのこれまでの経緯。
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*クリックで別ウィンドウ拡大表示可。

否応に係らず、足尾に関する知識が道々増える。

これはボランティアの施設の様子で、”トイレ有り”と掲示はあるものの本日は無人で、トイレの利用不可。
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まともに車が進入できるのは、さきほどの施設の先まで。
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ここより先は林道が続くものの、本格的なダートとなる。

09:05大ナギ沢出合

大ナギ沢出合

ここまでの渓谷沿いの景色は全般こんな感じ。
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私はグランドキャニオンへ行ったことはないが、私のイメージするグランドキャニオンは前掲画像のような感じ。
そんなことで、写真を撮るのに忙しく、なかなか先へ進まない。

今までは沢に沿った林道上を歩くだけだったが、沢へ降りるシチュエーションがようやく出始める。
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画像正面は一つ目の砂防ダム。

基本は相変わらず、こんな感じの荒涼とした道を進む。
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こんな感じの崩壊地もあり。
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この後、林道上の崩壊地が多数でてくる。
最初は逐一撮っていたがキリが無く、途中から撮るのをやめる。

渡良瀬川を遡上するにつれ、その沢幅は徐々に狭くなっていく。
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いや~。
この道は実に気分が良い!!

山腹は更に荒々しさを増し、奇観を愛でつつ緩い坂を登っていく。
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私はカメラが趣味というわけではないので、いつもは要所要所や、目に付いたところをちょっと写真に収めるだけだ。
しかし、今回は写真に忙しい。
全部載せたいが切りがない。
一登山辺りの撮影枚数は、今回の登山で記録を塗り替えました。
それに伴い、記事もなかなか先へ進まない…。

これは二つ目の砂防ダム。
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で、砂防ダムを超えた。
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ここより先で、ルートはようやく河原歩きがメインとなる。

だだっ広い河原ですが、ルート上にはこの程度のマーキングはある。
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全般、右岸は切り立っているので、基本は左岸(右側)を意識して進む。

また、こんな感じのマーキングもある。
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イエローのマーキングは古では渡渉点を表しているような感じの場所でマークされているが、月日により地形が変わったか?イエローマーク=100%渡渉するわけではない。

で、最初の渡渉点。
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このまま左岸を突き進んだ場合、行き詰ってしまう。

河原を歩く際は常に、こんな感じで渡渉点を念頭に置きつつ河原を観察しつつ、遡上する。
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で、行き詰るのが予感したら、適当な場所で渡渉する。
ここでは、再度左岸に戻った。
前掲画像位の場所なら、丹沢辺りでもチラホラある。
メンドクサイので、まだ沢靴に履き替えない。
ストックを補助に、岩の頭を拾いつつ渡る。

で、そうこうしているうちに、三つ目の砂防ダムが見えた。

この砂防ダムは素直に通してくれない。

現場に到着すると、こんな感じで高巻きを誘導していると思われるテープを発見。
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その道は脆い土の急傾斜!
土+デカい岩+小っちゃい岩のミックス。
デカい岩の一部が土から露出しているのか?小っちゃい岩なのか?パッと見では判断不能。
足を小っちゃい岩に置いた場合、かなりの確率で土から剥がれ落ち、これが急傾斜上であると、ひじょーに危険!

かなり登り、砂防ダムは眼下にある。
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ここで手を離したら一巻の終わり。
で、ここより砂防ダムの壁面をよく見ると、下から見たときには確認できなかった足場がついている。
”なんだよ…”
このまま高巻道を進んでも、どこにでるか?解らず、素直に戻る。

で、これがダム壁面に設置されている足場。
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この足場へ至るには、こんな感じで進めそうな気がする。
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私は高巻道のレールを途中で替え、こんな感じで至った。
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この堰堤周辺では完全にテープに翻弄される。

で、ようやっと三つ目の堰堤を超えた…。
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10:43三沢出合

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前掲画像は渡渉点を撮影したものですが、時間的にこの辺りが”三沢出合”のハズ。
三沢は涸沢だったか?私は気付かず進んでしまったので、画像はなし。
ここまで来ると、渓谷の幅は更に狭くなり、吹き抜ける風が気持ち良いを通り越し、寒い!

しかし!

ここからが渓流絶景ポイントがスタートすることになる。
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更に!
ここより先は、基本、トレースなどはない。
歩きやすいところを歩くだけ。
結果、浮石の天国!

極力浮石に乗らないよう、デカい岩の頭をひろって進む。
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これは渡渉点
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なお、今現在、未だに沢靴には履き替えていない。

で、ふと頭を上げると、今回の目標をようやく望む!
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蒼い!!
浮石を避けての河原歩きにウンザリし出していたところ、この景色を望む。
結果、やる気が出た!!
ろくに休憩もとらず、更に進む。

いや~。

渓流が続く!
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まだ続く!
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まだまだ続く!!
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で、ここで私の足が立ち止まる…。
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これだ…。
ここがヤマケイで、松木渓谷を特集していた際に掲載していた”淵”だ。
今回の山行の目的の一つはこの淵を見てみたい、ということだった。
いや~…。
癒される…。
ここでの休憩は長いものとなる。

ちなみに、この時点で通常の山行記事で掲載している画像枚数位載せてしまった…。
このページを開くのは少々重かったと思いますが、ご容赦ください。

休憩を終え、更に進む。
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今は若干、高巻いているところ。

ちなみに、ルート途上全般の高巻道について。
いっぱい、色々、トレース・マークが付いている。
あくまで私のイメージでの話ですが、付いている高巻きトレースでも、低空飛行、高度飛行のものがある様子で、私はどのトレースも全てイマイチ信用できない。
今、高巻いているこの道からしてそうだ。
高巻いてみると、行きゆく先はストンと落ちており、行止まり。
で、下を覗くと高巻かなくても進めるルートが目視できる。
で、結局戻る。
私が追ったトレースは獣のものかもしれない。
そんなこんなで、もう、高巻くのはやめる。
ん?
高巻くべきところは、もうないか…。

ニゴリ沢分岐手前にて。
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13:12ニゴリ沢分岐

ニゴリ沢分岐

左奥から流れているのが、”松木沢本谷”。
右に曲がれば”ニゴリ沢”。
ここは右に曲がる。

先ほどまでもトレースはほとんどなかったが、ここから先は浮石+へんな草が生えていて、更に難渋させられる。
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”あっちの方がマシかな…”などと思い、向かってみるも更にひどくなったりする。
そんなことで、ニゴリ沢では右に左に曲がり、歩いている割には、なかなか進まない。

それでも、だいぶ沢を詰め、ようやくモミジ尾根の取付きを発見。
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ここで休憩を入れる。

国境平には水場があると、確認していた。
しかし、最悪、発見できなかった時の為に、最低限の水として1Lのプラティパスに水を満タンに詰める。
すると…。
そのキャップをここで失くす…。

たぶん、この岩どもの下のどこかにある。
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水汲み用に2.5Lのプラティパスも持ってきていた。
暫し、キャップを探していましたが、いくら探しても出てこないので、已む無く、2.5Lのキャップを1.0Lにつける。

さて。
この尾根さえ登り切っちゃえば、今日のねぐらに到着だ。

さっそく取付く。
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”モミジ尾根”などと、優しげな名称が冠せられているが、この尾根の傾斜はそうとう急だ。

しかし、意外に?道はシッカリしている。
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道はジグザグにトレース、いや、登山道が切られ、前掲画像の如く、マーク・ロープでルートを誘導してくれる。
先ほどまでの河原歩きの苦労に比べれば天国みたいなものだ。
この急傾斜は、そのままズーッと続くわけではない。

30分も登ると雰囲気はこのようになる。
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ところで…。
画像からお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、約2時間前から晴天に陰りが出始め、雪とも雨とも判別つかないものが舞っている。

ここまで登り、皇海山を望むと景色はこのようになっていました。
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山頂付近を白く巻いているのは、ガスではなく雪!!
私の服にも、サラサラと雪がまとわりつくようになった。

更に進み、本日のゴール「国境平」が見えた。
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あと、もうちょっと!

国境平手前にて。
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ここまで登っても、ルートを示すマーク・ロープは途切れない。
ただし、ロープは所々、倒木により切断されている。

15:14国境平

国境平

時計の気温計で5.5℃。
服に時計が密着していたので、もうちょっと、気温は低いかもしれない。

ここに至ると強い北風に煽られる。
雪と相まって、ちょー寒い!
取りあえず、ツエルトを張るべく、風下で適当な場所を探す。

ツエルトを張るのに適当な場所はたくさんある。
しかし…。
大抵の場所は先に鹿の寝床となっており、そのような場所では鹿のフンが大量に転がっている…。

フンの上にツエルトを張ることに抵抗を感じた私は、更に探し、ようやく風下でマシな場所を発見。
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ここでようやくザックを降ろす。

で、ツエルトを張る。
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次は水場探し。
ザックを開け、インナーダウンを着、山中をウロツク。
しかし、見当たらない…。
といいますか、本腰入れないと発見できない。
パッと、”水場コッチ!”と道標等はない。
本来であれば、執念深く探すべきなのですが、北風+雪でちょー寒く、探す気になれない。
幸い、残雪があったので、バッチイ雪を融かし、水を作ることにする。
この寒い中をウロツクよりはだいぶマシだ。

これで、寝床も水も確保した。
ツエルト内に荷物を詰め込む。
今日の山行には不要だったものが目に入る。
それは沢靴。
結局、沢靴は必要なかった。
ただし、それはストックがあったからである。
これがなければ、やはり、要沢靴。

荷物を片し、後は飯を喰うこと位しかやることがなくなったが、まだ、飯の時間には早い。
寒いこともあり、シェラフに包まり、ボーっとラジオを聞いていましたが、晩酌用にビールを飲まずに我慢している。
我慢できなくなった私は”もう、喰うか!”と飯を喰い、ビールも飲んでしまった。
これで、もう、本当にやることがなくなった。
再度、シェラフに包まり横になっていたら眠くなってきた。
ほぼ、日が沈むのと同時に眠りにつく。

夜、寝ていると、なにやら”サラサラ”と音がする。
”ヤバイ!”とバサッとシェラフを跳ね除ける。
外に靴を出していた。
靴内に雪が積もるとヤバイ!
急いで靴を中に入れる。
外に顔を出すと雪は降っていない。

原因は、ツエルト内部で結露した水分が霜となり、壁面イッパイに張り付き、風でツエルトが揺すられる度にそれが剥がれ堕ち、サラサラと音がする。

その後は顔面に落ちてくる、霜との格闘!
霜が顔面に落ちてくる度に、その冷たい刺激で目が覚める。
頭まで、ズッポリシェラフを被ることで、凌ぐ。

2日目

朝、外が明るくなったことで眼が覚める。
昨夜は霜の件があったはあったが、良く寝れた。
食欲もある。

しかし、寒い…。
目は覚めたが寒くてずっとシェラフに包まっていたい。
”もっと気温が上がるまで寝るか?”と脳裏を過るも、意を決し、起きる。
その後は、淡々とすべきことをこなす。

05:37国境平

国境平

時計の気温計で-0.8℃。

さて、二日目。
国境平の標高は約1600m弱。
皇海山山頂の標高は2144m。
今は完全に陽が登っており、私が寝ていた場所での最低気温は、もう、1、2℃は低かったか?
と、すれば、山頂付近の最低気温は-5、6℃といったところか?
昨夜ラジオで、今日は晴天で気温が上がるも朝は放射冷却により、相当冷えると予報していた。
シャーベットとなっていた雪は、氷っているかもしれない。
まー、考えても仕方ない。

ぼちぼち出発。
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しかし…。
国境平から望む皇海山は素晴らしい…。
ちょっとでもいいカットで撮れないか?ヘタな写真を枚数でカバーするべく、なかなか先へ進まない。

この熊笹の原っぱを朝から歩くのも、チョー気分が良い!
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で、国境平のエリアを通り過ぎると、次は樹林帯のエリアに突入する。
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なお、ここに至っても、モミジ尾根取付きから続くのと同様のプレートが木に打たれており、ルートを誘導してくれている。

で、この途上より、雪がまとまりだしてくる。
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更に標高を稼ぎ、樹林の密度が薄くなると完全に雪山となる。
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ここら辺りから、登山靴ではスリップするようになったので、アイゼン装着。

斜面の途上にて。
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日光白根山を望む。

皇海山へ至るこの斜面は、私がイメージしていたよりも傾斜が急だ。
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時に、アックスのピックを使わないとどうにもならない時がある。
また、アイゼンの前爪を雪面に蹴り込みつつ、徐々に標高を稼ぐ。

で、稜線に乗った。
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後は、この比較的傾斜が緩い稜線を登り切れば山頂だ。
稜線のセンターは樹林に覆われ、差し当たり、斜めった斜面上を進むしかない。
しかし、樹林の中には登山道が隠れているようで、時折、樹林の中を進む。
再度、斜面側にでて木を避けようとした、次の瞬間、雪面を滑り落ちていた。

滑落したのだ。

今も、なぜ滑落したのか?明確に思い出すことができない。
なにか、それっぽいようなことを書けそうな気がするが、そうではないような気もする。
結果、滑落の原因は不明。

何はともあれ、落ちた。
傾斜は急で、猛烈なスピードで落ちていく。
雪の状態は半アイスバーンとでもいうもので、ピックを深々と差し込んだ場合、4~5回、グリグリ動かさないと抜けない状態だった。
雪面はツルツルに近い。
一瞬、滑落停止の行動を試みるも、ピックはカリカリと音を奏でるだけ。
そもそも滑落停止の練習など、したことがないのだ。
そんな無駄な努力は止め、どこに落ちるのか下を覗く。

樹林の密度は薄い。
が、幸い、樹林に手が届きそうな所に落ちていく。
それを掴むべく、手を伸ばすも失敗。
更に滑ると、もう一本寄ってくる。
今度は木に激突する覚悟で、体の向きを変えるべく努力する。
ドォーン!!、と木に激突。

ようやく止まった…。

「痛ってー…」と唸りつつ、体をもたげる。
どうも、顎先をフック打たれたような衝撃があった様子で、一瞬なにがなんだか解らない。
差し当たり、これから何処へ向かわなければならないのか?思い出せない。
ハッキリしているのは、落ちた、ということだけ。
気を落ち着かせる為、タバコを咥える。
2~3本吸ったら、冷静になってきた。
取りあえず、頭の中で体の状態を確認する。
どうやら、木に激突したショックは、

  • 両大腿部及び右肩打撲
  • 左顔面強打
  • 左手首、左足首捻挫
  • 擦り傷多数

として表れている。
他、自分のカッコを眺めてみると、右のアイゼンがどっかに吹っ飛んでいる。
左手に持っていたはずの、最短に畳んだストックがない。
他の装備は問題ない。
暫し、うな垂れていましたが、霞んでいた頭もだいぶスッキリしてきた。

なにはともあれ、この斜面を登らなければならない。
すっ飛んだ右足のアイゼンの代わりに常備のチェーンスパイクをあてる。
後、自分の滑落痕の後を追うように斜面を登る。

道々、失くした道具が転がっていた。
それらを回収し、アイゼンは直ぐ履き替え、更に登る。

で、再度、稜線に這い上がった…。
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画像の木を避けようとしたら、こんなハメになった。
なんで、こんなところで…。
取りあえず、足は動く。
山頂へ向けてヨロヨロと進む。

08:59皇海山山頂

皇海山山頂

時計の気温計で5.7℃。
山頂は樹林に覆われており、景色は見れない。
ここで座りもせず、即、下山開始。

下山途上にて。
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鋸山を望む。

今は相当冷静になっており、道々、自分の体を観察してきた。
取りあえず、問題のない四肢はない。

山頂に到着した時点で今回の計画を放棄し、逃げる、という選択に腹を決めていた。
しかし、実際、予定ルート上にある鋸山を見ちゃうと、改めて”無理だな”と引導を渡された気になる。
下山に取り掛かると、両大腿部の打撲がボディーブローのように効いてきた。
重度の筋肉痛のように、足に力を入れる度に痛くなる。

さて。
逃げるのは良いが問題が…。
この状態に至って、自分が転げ落ちた斜面を再度降って、松木渓谷経由で逃げる気はまったくない。
雪の斜面をクリアしても、その後、なが~い河原歩きが待っている。
残された選択肢は、予定コースを進むか、栗原川林道を利用して里へ出るかしかないが、予定コースについては先ほどのとおり、鋸山をやっつける自信はまったくない。
残されたのは栗原川林道で里へ出るルートだけ、なわけですが、里へ出るまでの距離がえらい長い。
その距離!
まったく解らない…。
少なくみても登山口から20kmはあるか?
しかし、距離はあるが安全な道だ。

更に、山の反対側に車がある。
ザックに入っているキャッシュは5000円ほどだ。
どうやって車まで戻るか?

そんなこと考えても仕方ない。
何時になろうと、トボトボ歩いて帰るしかない。
そんな腹が固まる。
そんな行動を予感させるように、本日はまだ一人しかすれ違っていない。
人気のない皇海山のことだ。
土日ならともかく、平日では何人も登らないだろう。
従って、車に乗せてくれるようお願いできるチャンスはあるか?

10:28不動沢のコル

不動沢のコル

私の歩みは痛みにより、そうとう遅い。
先ほどすれ違った登山者はかなりの健脚風だった。
遅い私は抜かれてもおかしくないのに抜かれていない。
ということは、国境平方面へ降る予定の強者だったか?

ここで一服入れた後、更にくだる。
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11:50二俣

12:18不動沢コース登山口

不動沢コース登山口

登山口、ちょっと上位の場所で、登りの登山者とすれ違った。
登山口に駐車している車は一台しか確認できず、置いてある車はその方のものか?
健脚風の登山者とは、結局、その後会うことはなかった。
車の方は、先ほど登りだしたばかりだ。
山行時間のことを考えたら、その方が下山する頃には里へでているかもしれない。

そんなことを考え、栗原川林道をトボトボと歩く。
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歩く…、歩く…、歩く…
先ほどから1時間置きに休憩を入れつつ、永遠続くかのようなこの、忌々しい、砂利の林道を歩いている。
砂利というのは厄介だ。
いい加減に足を置くと時折、ズルっと滑る。
その度に打撲の太ももが悲鳴をあげる。

16:12栗原川林道途上

GPSのデータによると、登山口より約15~16km歩いたところで、登山口に車を置いていた登山者の方の車が私に追いつく。
この時は、相当自棄になっており、車の方が声をかけてくれないなら、自分の足で降り切ってやろう、とまで考えていました。

しかし…。

「乗っていきますか?」
と優しい声を掛けていただけました。
もちろん!
ウレシ―!
ありがたくお言葉に甘えさせていただきます!

これで、今回の登山がようやく終わった…。
とはいうものの、甘えっぱなし、という訳にはいかない。
車に戻ればクレジットカードがある。
車に戻っても財布に入っているのは、確か…、2万円弱。
クレジットカードが使えるタクシーに乗れれば、何万円かかろうとも車に帰れるな、と算段をつけていました。

そんなことで、麓のお土産屋さんまで載せてもらい、謝意を述べ、その方とお別れしました。
あいにく、お名前をお尋ねするのを忘れました。
この場を借りて、厚く御礼申し上げます!
ありがとうございました!

さて。
これからタクシーに乗らなければならない。
お土産屋さんで降ろしてもらったのは、商売柄、お客さんの為にタクシーを呼ぶこともあるであろう。
懇意にしているタクシーが数台あるのでは?との読みでした。
そのタクシー乗るのに、紹介料を取られても構わない。
そんなことで、その旨、お店の方に相談すると、やはり、懇意のタクシーがある様子で、電話をかけていただけたものの、あいにくタクシーは不在。

すると…。

その応対いただいた店員さんがなんと!優しくも!私を足尾方面にある「船石峠駐車場」まで、個人的にご自分の車で送り届けていただける、と申し出をいただく。
流石に恐縮した私は、「いや、それは悪いから、路上を通過するタクシーを捕まえる」と言ってみたものの、そもそもタクシー等、ろくに走っていないし、時間は既に17:00頃で、少ないタクシーが更に減るだろう。

結局、恐縮しつつも、お願いすることにする。

その優しいお土産屋さんは群馬の名勝地「吹割の滝」はす向かいにある「伽羅苑」さん!
皆様、なにかありましたら、御ひいき宜しくお願いいたします!

お土産屋さんの車に乗り、道々、色々話をする。
その方は偶然にも、私と同年代の昭和44年生の男性だ。
そんなことで気が合い、車中、話が盛り上がる。
で、ようやく駐車場に到着した。

時刻は19:00前。
実に、約2時間も手間をとらせる結果となってしまい、帰りの分も考えれば延べ4時間だ…。
私には、お土産屋さんの男気に応える術が今ない。
お土産屋さんの男気はお金に換えることはできないが、今の私にできることはそれ位しかない。
私は感謝の気持ちを込め、”元々、タクシー代を払うつもりだったから”と、タクシー代にも満たないが、財布の中に入っていた全てのお金を飲み代にして欲しい、と渡す。

これで、私の長い二日間は終わりました。
色々考えさせられる山行でした。
滑落の件については登山技術的な話なので、今後の対応は明確で、やはり、それなりの訓練・指導をいただく、というのは重要と思いました。

下山時に救っていただいたお二方については、感謝の言葉がつきません。
お土産屋さんは17:00閉店で、登山者の方が車に乗せてくれなければ、閉店に間に合いませんでした。
お土産屋さんに17:00までに到着していたとしても、車に乗せてくれた方以外は皆女性で、訳のわからん男を車に乗せてくれるとは到底思えないし、お願いもできない。
一つ欠けても、このような結果となっておらず、なにか、目に見えないものに導かれているような気になりました。
お土産屋さんの方は地元の方で、足尾方面へ行くことがいかに遠方かを承知されていた。
にも係らず、私を2時間かけて送ってくれた。
これは、仮に私がお土産屋さんだった場合、同じ判断・行動ができていたか?

難しかったと思います。

しかし、恩には恩で返さなければならない。
今後は、お土産屋さんと同じ判断・行動ができるよう、精神面を精進してまいります。

そんなことで、色々と課題が残る山行でした。
”調子に乗るな!”そんな意味を込めて、罰と忠告を神様から与えられたような気になりました。

本日は寄道せず、帰宅。

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