日本百名山「剱岳」(室堂よりピストン)

◎2018.10.2(Tue)-3(Wed) 天気:2日:雨後曇り 3日:晴れ 気温:—

紅葉シーズン後を狙い、M浦氏、M本氏ともに剱岳へ向かった。
初日は室堂より剣山荘へ向かい、宿泊。
2日目は剣山荘より剱岳登頂、室堂へ下山。
2日行程の計画だ。

初日、扇沢始発のトロバスに乗った私たちが室堂に到着した時は雨が降っていた。
今日は時間が経つにつれ回復する予報だったので、剣山荘まで歩くだけだったこともあり、室堂駅でウダウダ時間を過ごした。
10時頃になると雨が止んだので、ようやく出発。

剣山荘に到着したのは13時頃であった。

夕食は17:00。
翌朝食は05:30。
喫煙所的なものは無く、灰皿すらない。
タバコは外で適当に喫うだけだ。
途中で通過したテント場がガラガラだったので、恐らく小屋も空いているだろう、と思っていたが、我ら3人に対して4人部屋を占有であてがってくれた。

夕食17:00まで時間がある。
男3人、時間を潰す手段は飲むこと位しか思いつかない。
室内は飲食禁止と告げられていた。
談話室を兼ねた食堂にて、つまみやらなんやら広げ、ビールを飲んだ。

これが良くなかったのか…?
恐らく、過酷な運命への入口はこの宴会だったと思う。

出発の前日。
つまり1日(月)。
時間は25時(…ってもう火曜じゃん)に扇沢駅有料駐車場に着いた。
到着してすぐ寝れるわけもなく、夢の世界に入ったのは02:00頃か?
06:00に目覚ましを鳴らしたので4時間ほどは寝れたわけだ。
睡眠時間4時間に程よい運動が加わった。
更にアルコールに醸された私は15時に昼寝のつもりで寝た。
17時、飯の時間だ、と仲間に起こされ、半分夢の中、食堂の椅子に座った。
昼の宴会時、飲むだけでなく食った私は寝起きであったこともあり、食欲がまったく無い。
結局、2口ほど食って部屋に戻ってまた寝た。
翌日は小屋を06:00に出発予定だったので、朝食は弁当にしてもらっていた。
軽く高山病になっていたのかも知れない。
昨夜はほとんど食っていなかったので、朝食の弁当は平らげるつもりだったが、食欲がない…。
やはり2口ほど食って袋に仕舞った。

朝起きると絶好の晴天!
予定どおり、06:00。
剱岳山頂へ向けて剣山荘を出発した。
寝起きから調子が上がらなかった私だったが、体が暖まる頃になると平静となっていた?
確かに気分は平静だ。
しかし、体がついてこない。
なんせ、昨日の15時以降、まともに食っていない。
標高が高いからちょっと苦しいのもあるはあるが、そんなレベルじゃない。
調子の悪さは前剱に至るまでのコースタイムからして明らかだった。
要するに”シャリバテ”。
前剱の段階で行程に危機感を持った私は、やむなく最終手段!
前剱山頂付近のハイマツの中にザックをデポし、空荷で山頂へ向かうことにした。

途中、抜かされる抜かされる…。
重い脚を上げるも、帰りの体力を温存しておかなければならない。
”抜かすなら抜かせ!”と思いつつ、息が切れない程度のマイペースでジリジリと山頂へ向かった。

登りのクライマックスであるカニのタテバイ。

凄い!
ほぼ直壁で30m位あるか?(実際は50mらしい)
手足の置場は問題ないが、クサリが垂れているだけでこの壁をフリーで登るのか。
なんとも言えない違和感。
落ちたら死ぬぞ。
妙義なんかだったら登攀具揃えていても、それが当然、といった雰囲気だが、ここは違う。
私がハーネスにスリング垂らしていただけで”どこのバリエーションですか?”と何度か聞かれた。
ノーマルルートでそれは大袈裟でしょ、云わんばかりだ。
てか、死人が出ないのかな?

ネットで見ると、やっぱ死んでるな。
百名山恐るべし…せめて、ランヤードでもあれば死なんものを。

無事、タテバイをクリアし、剱岳の山頂に立った。

時刻は既に10:00になろうとしていた。
剣山荘から山頂まで4時間近くかかってしまった…。
ザックをデポしたので水をM浦氏に持ってもらっていた。
いやー感謝!
水を飲み、軽く食い、ヤニ食って、のんびりできないので、すぐ下山に取り掛かった。

下山のクライマックスは、やはりヨコバイ。
こいつも凄い。
スッパリ切れ落ちた斜面を、トラバースしつつ、クサリを頼りにフリーで降る。
タテバイとの大きな違いは、下を望みつつ降らなければならない。
つまり、常に高度を感じながら斜面に張り付くことになる。
しかも、それをフリーで降るわけだ。
妙義との比較で言えば、タテバイは鷹戻し。
ヨコバイはさしずめビビり岩。
しかし、ヨコバイの斜度はビビり岩が比にならないほど立っている。

…ヨコバイも死人が出ているな。

と、他人の心配をしているより、まずは自分の心配をしなければならない。
下山に取り掛かったが、”降る”だけでは済まない。
剣山荘までの間だけでも、平蔵の頭、前剱、一服剱とピークが連なる。
その度に登り返すことになり、シャリバテが顕著になった私は、異常なスローペースで登り返す。
ようやく登り返しから解放され、くろゆりのコル手前辺りで、時刻は12:00になろうとしていた。

ここまで降るまでの間、ずっと考えていた。
”室堂の終バスに果たして間に合うのか?”
室堂発扇沢方面への終バスは16:30だ。
終バスまでの残り時間は4時間30分ということになる。
くろゆりのコルから室堂までのコースタイムは概ね3時間半。
コースタイムで歩ければ、何も問題はない。

本来の計画というかコースタイムでは、くろゆりのコルは10:30頃に着の計画であった。
しかし、くろゆりのコルに至っていないのに12:00になろうとしている。
つまり、コースタイム4時間半のところ6時間食っている。
原因は私の足が遅いからこうなっているわけだ。
M浦氏、M本氏のみだったら問題なくコースタイムで残りを消化できるだろう。
では、私一人切り離すしかないな…との結論に至った。
私連れだと全員、終バスに間に合わなくなる可能性がある。
リスク分散?ってやつだ。
そんな打合せを皆とした。
万一、終バスに間に合わなくて、現地でもう一泊する羽目になった時に備え、M浦氏から金を借りた。
また、私が持っている不要な荷物をM浦氏、M本氏に分散して持っていただくことになった。

二人と別れ、二人を追うように行動を開始した。
二人はあっという間に先行し、20分もすると目の届かないところへ行ってしまった。
さて、これで気が楽になったといえばなった。
最悪、もう一泊できる選択肢ができたからだ。
本当にもう一泊する羽目になるか?は、剱御前小舎に到着する時間で決まるだろうと考えていた。

くろゆりのコルを過ぎ、剱御前小舎までは緩い傾斜が続く。
緩いはずなのですが…なんせ足が上がらない。
この間、亡霊のようになって歩いていた。
すると、私と似たような亡霊の方、数名と出会った?
正確には出合ったわけではない。
ただ、すぐ後ろに居るというか気配を感じているだけだ。
お互い、挨拶を交わすようなゆとりはない。
私のことを抜かすか?と思いつつ歩くも、いつまで経っても抜くわけではない。
観察をしていると、私が立ち止まると立ち止まっていた。
”ん?私がペースメーカー?”
丁度、あまりの疲労で心が折れたので座り込み、食い残しの小屋製弁当食って水を飲んだ。
お相手の亡霊さんは一瞬躊躇していたが、ようやく私を抜いて先行してくれた。
弁当食って、水を飲んで、やることが無くなったので、残りの仕事を仕上げるような気持ちで再び歩き出した。
剱御前小舎に着いたのは13:45頃になった。

さてさて、終バスに間に合う目が出たと言っていいだろう。
ここからコースタイム1時間10分の道のりを経て雷鳥平のテント場まで降る。
そこまで至れば、室堂までのコースタイムは1時間10分。
コースタイムでクリアできれば、概ね16時には室堂に到着できる計算だ。
ここから雷鳥平までは降りが続く。
幸い、スタミナは乏しいが、筋力にはゆとりがある。
コースタイムで降ると15:00位になってしまうが、”14:30までに降りきってやる!”決意で坂へ向かった。
この降りは整備はされているが、小石を撒き散らしたような道が続く。
デカい岩もゴロゴロしている。
沢での経験を活かし、デカい岩の頭を飛び石伝いに降った。
この方が足裏や関節への負担は増すがすっころぶリスクは低い。
雷鳥平のテント場着は、結局14:45分だった。

残り、室堂までのコースタイムは1時間10分。
コースタイムで歩けて、16時前に室堂に着く。
コースタイムで歩けなくても30分も余裕がある。
しかし、ここからが本当の地獄だった…。
雷鳥平のテント場から先は、立山観光の観光客が歩いているようなところだ。
外国語が飛び交い、道はコンクリで整備され、石ころなんか転がっていない。
しかし、室堂までは階段で登りが続く…。

また亡霊に逆戻りか…。
最初は10段登って一休み。
それが5段登って一休みになった。
最終的には2段登って一休み…。
スタミナ切れで体がどうにもならん!
それでも座り込みだけはせず歩き続けた。
室堂バスターミナル着は16:00ジャスト位。
もう、時間なんかどうでもいい。
残りのコースタイムの計算をしないで済むようになった。

勉強時間

お恥ずかしい話しなのですが、いわゆる”台風一過の晴天”というものを過信しておりました。
これは山行前日、10/1 06:00の天気図。

大型の台風24号が青森辺りでしょうか。
北東へ抜けようとしているところです。
私の自宅は横浜なのですが、当日の横浜は台風が抜けた直後でしたので私が過信していた”台風一過の晴天”そのまんまの状況でした。

まあ、単純に、
台風が抜けた=風が強いかもしれないが晴天
と解釈していたわけです。

山行初日、10/2 06:00の天気図。

しかし、その後、天気図はこうなります。
ヤマテンでは、”西高東低の冬型の気圧配置”とのことで、剱岳は大荒れで雪予報。
実際、この日の剱岳は雪となり、ほとんどの方が前剱で引き返すことになったようです。
登頂した方のお話しではクサリが凍り付いていたとのこと。

そうか…。
台風が東に抜け、”東低”。
大陸の高気圧は居座り続けているので、”西高”。
そんなパターンもあるのだな、と今回思い知らされたわけです。

ちなみに、メインである剱岳を登頂した山行2日目の10/3 06:00の天気図。

西高東低の気圧配置は早、崩れた。
北アルプスは高気圧に覆われて、終日晴天でした!

資料

剱岳別山尾根ルート 安全登山マップ(富山県自然保護課発行)

↑ PDFでダウンロード可

別山尾根ルートは部分的に登り降りのルートが異なります。
また、危険個所等、注意点が記載されています。

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