スマートフォン登山用GPS化計画(TORQUE(トルク) G01の場合)

今回は、TORQUE(トルク) G01について、登山用GPSとしての性能に肉薄してみた。

GPS精度確認

ガーミン「オレゴン450TC」とトルクG01の両GPSログを取りつつ日本二百名山「仙ノ倉山」を登ってみた。
◎ガーミン「オレゴン450TC」設定状況
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  • 記録方法:自動(移動速度に合わせてログ記録間隔を多くしたり少なくしたり自動調整)
  • 記録間隔:標準

他、測位システムは”MSAS/MAAS”ということで、補正データを利用し位置情報の精度を上げた設定になっています。
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◎トルクG01設定状況
機内モードに設定し、位置情報の取得は本体内蔵のGPSエンジンのみに設定。

ログの記録は「山旅ロガー」に依り、設定状況は以下のとおりです。
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両GPSをザックの上蓋に入れ行動しました。
行動中、一度も両GPSの操作はしていません。

さっそく結果から。
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  • 赤線:ガーミン「オレゴン450TC」
  • 緑線:トルクG01

移動軌跡は部分的にズレが生じている。

どちらがズレているのか番号の場所について確認してみます。
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◎場所①

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現地、平標山登山口駐車場辺りのログです。

現地は空が開けた地形になっています。
平標山登山口駐車場

北東方向へ登り、南東方向から下山してきました。
画像のとおりですが、出発時点では両移動軌跡はラップしていますが、下山時は大きくズレが生じている。
車は移動していないので、同じ場所に帰っており、赤線のように移動軌跡はラップしないといけないのですが、緑線についてはそうはなっていない。
つまり、トルクG01の軌跡は正確ではありません。

◎場所②

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平標山~仙ノ倉山間を往復した時の移動軌跡です。
山頂手前、P2021辺りは稜線上であり、空に遮るものは何もありません。

往路では、両軌跡は見事にラップしていますが、復路で何故か?緑線が不安定になる。
赤線については、往路復路共に同じ軌跡を描いており、当然、この位置情報が正確です。

◎場所③

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平標山ノ家~平元新道登山口間のログです。
地形は、山腹をトラバース気味に降り、下部は沢スジです。
沢スジではありますが、地形図が示すとおり切り立った場所ではなく、比較的広く空を望めます。

赤線は地形図の登山道とほぼラップしており、緑線が不正確と思われます。

◎場所④

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場所は、平元新道登山口~平標山登山口駐車場へ至るまでの中間地点辺りまでです。
こちらについても、赤線は登山道、車道とラップしており正確と思われます。

◎感想

仙ノ倉山山頂に至るまでの往路では、概ね、移動軌跡はラップしていたのですが、復路からトルクG01の軌跡が不安定になり出した。
感覚的には”衛星一個キャッチが足りない”といったものでしょうか?
原因は不明。
昼飯を食べるのにザックを降ろしたことで、上蓋内で何かあったか?
往路では良好な結果だけに、ちょっと残念です。
もう一回、テストするかもです。

◎電池消費量確認

GPSの精度を確認した際、併せて電池消費量も確認していた。
先ほども触れましたが、山行中のスマートフォンの設定状況は、

  • 機内モード
  • スマートフォンを一度も操作していない
  • 裏で動いているアプリは極力停止

という状況です。

さっそくログから。
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山行時間は、延べ7時間21分。
消費電力は、99%→95%と、…たった4%?
つまり、1%あたり110分稼働した計算だ。
参考までに、消費電力半分の97%に達していたのは12:28。
山行開始は07:46なので、2%消費するのに要した時間は222分。
4%ぽっちしか消費していないのは嘘ではないようだ…。

素晴しい!

耐寒性能確認

トルクG01は「米国国防総省が定める耐久試験MIL-STD-810G 11項目に準拠した高い堅牢性」を確認する為に、

”動作環境:-21℃/50℃で各連続3時間、保管環境:-30℃/60℃で各連続4時間の温度耐久試験を実施”

しているそうだ。

-21℃で動く、ってどういうことだ?

電池で動く機器の耐寒性能は、機器本体の能力、というよりは、その電池の能力に左右されるはずである。
過去に、スマートフォンの耐寒性能を確認したことがある。
*これ → スマートフォン登山用GPS化計画(耐寒性能確認実験)
この時の実験結果では、スマートフォンに内蔵されているリチウムイオン電池は寒冷に強いとは言えず、イチコロだった。
つまり、トルクG01についてもリチウムイオン電池が採用されている限り、同様の結果となると思うのですが…?
それとも、ヒーターでも内蔵されていて、低温になったらヒーターが作動するのか?
それとも、電池消耗のスピードは当時も今も変わらないが、大容量化した電池により3時間以上は動く、というだけのことなのか?

トルクG01の耐寒性能を確認するべく、こいつを冷凍庫内に放置することにした。

本体内に電池温度を上げる為の仕組みがあるかもしれないので、タッパーに氷を張り、その上にトルクを乗せて、冷凍庫に入れることにした。
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もし、ヒーターが内蔵されていれば、氷が変形するはず。

現在、庫内の温度は-16.2℃。
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山での使用を想定して、機内モードに設定し、一応、山旅ロガーを起動させる(冷凍庫内なので、アプリがどれだけ動くか分かりませんが…)。
で、冷凍庫に投入(19:04)。

途中で、一度回収した。
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雪山を想定し、本体が冷え、ディスプレイが結露、又は薄く氷が付着した状態で、冬季用オーバーグローブでも操作できるか確認したかったからだ。
結果は良好。

グローブ装着状態で、タッチ、ピンチ、フリック全て思いのまま。
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オーバーグローブの指先でダブついている生地だけでタッチしてみた。
これでは、ディスプレイは無反応。
ちゃんと指でタッチしてやれば、ディスプレイは反応する。

素晴しい…。

過去に、雪山で自撮りをしようと思い、スマートフォンを安定させる為、三脚代わりに雪の中に突っ込んだことがある。
その時は、急激に冷やされた結果、瞬時にダウンしてしまい写真が取れなかった。
写真が撮れないどころか、スマートフォンは完全に沈黙してしまった。
その経験から考えれば、この温度の中で”動く”こと自体が奇跡に感じる。
トルクG01は、寒冷に強いことは間違いない。

再び冷凍庫に投入し、翌朝回収(04:43)。
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昨夜、冷凍庫に入れてから9時間47分経過している。
”既に電池切れになっているだろう…”とスマートフォンを操作すると動く!
電池は、残6%を示していた。

結果をまとめます。

  • 実験時間:19:04~翌04:43(延べ587分)
  • 電池温度:-3.7~-19.6℃
  • 電池残量レベル:97%→6%
  • 満充電時の想定連続稼働時間:645分(10時間45分)

電池消費のログを記録しているアプリ「Battery View」でグラフを見ると、電池消耗の経緯は単純ではなかった。
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ひな壇で消耗していた。

当初、27.8℃あった電池温度は徐々に冷え…。
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冷凍庫投入後、約20分経過した19:28で、電池状態から”GOOD”が消える。
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その3分後、電圧低下。
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更に電池温度は下がり続け、最初のピークは投入後、約50分経過した19:56。
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この時点で、電池残量91%。
その後、今度は電池温度が上がり続けた。

恐らく、このタイミング。
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ここで、先ほどご報告した、雪山想定のオーバーグローブ操作実験の為、一度、冷凍庫から取り出した。

電池温度はグングン上がり、-15.2℃を記録したわずか4分後の20:00に-3.7℃になる。
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また、電圧が3.8vまで下がったが、すぐに4.1vに回復し、電圧が安定する。
電池残量レベルが91%であったのは19:56~20:15の19分間で、残量レベルが1%下がるのに19分要していた。
このペースで消耗するなら、満充電時なら1900分、つまり、31時間40分連続稼働可能ということになる。

再び冷凍庫に投入し、二度目のピークを迎えたのは、21:25。
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このタイミングと思われる。
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この後、不思議なことに残量レベルが74%から減ることなく、電池温度がグングン上がり出し、二度目のピークから一時間経過した22:25に-9.0℃を記録。
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残量レベルが74%であったのは、21:28~22:59と1時間31分に及ぶ。
後、残量レベルは急激に下がる。

この後はこれを繰り返すことになる。

これは何を意味するのか?
やはり、低温が原因による電圧低下を防ぐべく、本体内にヒーターが内蔵されているのか?
それとも、冷凍庫の仕様により、庫内の温度がこのように変化するのか?
電池温度は常に氷点下を下回っていた為、タッパーに入れた氷に変化はなかった。
電池温度の変化は、冷凍庫の仕様によるものだったとしても、電池残量レベルが一定時間減らないことの説明にはならない。
*2015.2.2追記
その後、確認できました。
本体温度が上下する原因は、冷凍庫の仕様によるものです。

しかし、この電池残量レベルの特性により、寒冷地における長時間稼働が確保されている様子です。

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