スカルパ「ゼログラビティ65XCR」について(使用経過報告)

ユルユルソールの”スカルパ「ゼログラビティ65XCR」”。
早いもので、この靴を伴った山行も7回を数えます。
今回は、この靴について以下に挙げる事項について私なりの意見を述べていきたいと思います。

  1. アッパーのプロテクション
  2. 耐寒性能
  3. ソール形状
  4. ゴアテックスXCR

の4点です。

なお、こちらの写真は”スカルパ「シャルモGTX」。
DSCF0425.jpg

いずれの写真もソールを思いっきり曲げるべく前傾姿勢をとって撮影したものです。
ソールの柔らかさの程度を確認いただけると思います。

1.アッパーのプロテクションについて

まずは、下に掲載の写真をご参照ください。
スカルパ「ゼログラビティ65XCR」

力一杯、アッパーを押し込んでいますが、人差指一本によるものです。

下の写真は、同カットでなにもしていないもの。
スカルパ「ゼログラビティ65XCR」

ラバー材で保護されているにも係らず、アッパーが沈み込む程度を確認いただけると思います。
なお、同じ行為をシャルモGTXに為してもビクともしません。

なにを言いたいか?と申しますと”スカルパ「ゼログラビティ65XCR」”のアッパーにプロテクション効果はほとんど期待できないということです。
具体的には、河原、岩場、ガレた場所、ゴーロ状等、足場が不安定で岩がゴロゴロしているようなシチュエーションを歩く場合、不用意、無造作、雑に足を地面に置いた時に靴のサイドに岩が当たったりするとその衝撃は、ほぼダイレクトに足に伝わります。
その場合、当然ながらイタイ。
シャルモGTXとの比較でいえば、シャルモGTXよりも軽量化されているせいか?”プロテクション”という意味では比較にならないほど柔な造りになっています。
”トレッキング”という範疇では、”岩”はあまり考慮されない、と、いうことでしょうか?

2.耐寒性能について

甲武信ヶ岳へ登った際のこと。

5月も末頃だったのですが季節外れの降雪があり、山頂手前の樹林帯内では膝まで雪が積もっている中を「ゼログラビティ65XCR」を履いて突き進みました。
DSCF0348.jpg

ソールから伝わる熱はその厚みによりほとんど感じませんでしたが、アッパーから伝わる熱はゴアテックスファブリックが薄いせいか?気温は12℃前後と高いものの足はかなり冷えました。
ちょっとした雪渓歩きや残雪程度であれば問題ないですが、雪の中をガシガシ歩く、と、いう使用方法はやはり問題あるようです。

3.ソール形状について

やはり、まずは、以下の写真をご参照ください。
DSCF1006.jpg

右が「ゼログラビティ65XCR」、左が「シャルモGTX」のソールを並べてみました。
比較してみると、ソールのブロックの間隔が「ゼログラビティ65XCR」の方が大分広くなっています。
これは、それぞれの靴の用途の違いがでているものと思われますが、ブロックの間隔が広くなることにより、水はけの向上や土の詰まりを防止する役割りを担っているようです。
「シャルモGTX」が採用しているビブラムソールは「ビブラム・ムラツ」とのことで、以前に「シャルモGTX」の使用経過報告の際、そのソールについて触れましたが、「ゼログラビティ65XCR」が採用しているビブラムソールは「ビブラム・ハイトレイル」とのこと。
この「ビブラム・トレイル」。
数あるビブラムソール中、どういった位置づけなのか?よくわかりません。

「Vibram」のホームページを見ても掲載されていない様子。
*「Vibram」ホームページ→http://www.vibram.com/index.php/us/

輸入販売元「ロストアロー」記載の説明によると、
”ソールはブロックが深く、ぬかるみにも強いビブラム・ハイトレイル。”との説明書き。
ブロックが特に深い、と、いうこともなさそうですが、ぬかるみに強いとのことで、やはり土による目詰まりを意識したソールであることは間違いなさそうです。

更に詳細にソールを見てゆきます。

「ゼログラビティ65XCR」ソール拡大写真。
スカルパ「ゼログラビティ65XCR」

ブロックの角が鋭角になっておらず、ソール前方に向って斜めにカットされているのが確認できます。
これは、ソールが土で目詰まりを起こした場合、その土が剥がれやすくなる為の加工と思われます。
この加工について、土の上ではなく、別のシチュエーションでの使用を想定すると・・・。

例えば、下りの急傾斜の岩場。
私の場合、ほぼ日帰り専門なので、登りは元気で、下りはフラフラというのはよくあるケース。
そんなフラフラな状況で、下りの急傾斜の岩場、しかも岩が濡れている。
そこへ、「ビブラム・ハイトレイル」のソールを岩へ置く。
そのソールのブロックの角は鋭角ではなく、前方へ斜めっており、ソールのブロックは岩のどこにも引っかからずツルッツル。
体力が十分な状態であれば、まだ踏ん張りが効くもののいい加減疲労しており、踏ん張りが効かない。
結果、ズルッと滑る・・・。

先日登った鳳凰山であった実話です。

”そんなフラフラの状況を招いているオマエが悪い”と言われてしまいそうですが、とはいいつつも登山はスポーツ。
フラフラになるつもりはなくてもフラフラになる可能性は十分あるわけなので、自分の体力は兎も角。
”ソール”という道具として「ビブラム・ハイトレイル」を見た場合、ブロックパターン上、岩場、特に下りには不向きなソールと言えると思います。

4.ゴアテックスXCRについて

”ゴアテックスXCRってなに?”とキーワードを入力して検索してみた方も多いことと思います。
私もその一人なのですが、この”ゴアテックスXCR”。
調べてみても、イマイチよく解らない。
そもそも”XCR”とは、なんの略なのか?

いろいろ調べてみると”XCR”と称号が付く付かないに係らず、ゴアテックスメンブレン(ゴアテックスのフィルム)に違いはなく、ゴアテックスメンブレンを埋め込んだ生地(ゴアテックスファブリック)を利用したプロダクト(製品)について、一定以上の防水透湿性が確保されるものに”XCR”の称号が与えられる様子。
その一定以上の防水透湿性を達成する為に、表生地の厚さや撥水性等が関係しているようで、表生地が厚ければ透湿性は低下しますし、撥水性が高ければゴアテックスメンブレンが濡れず、安定した防水透湿性が確保される、と、いうことのようです。
「ゼログラビティ65XCR」では”XCR”の称号を得ている証か?「シャルモGTX」では採用されていない「ゴアテックスブーティー」を採用しています。

下の写真は、インソールを外して靴内部を撮影したものです。
スカルパ「ゼログラビティ65XCR」
*参考(ロストアロー「ゴアテックスライニングのタイプ別特長」):http://www.lostarrow.co.jp/support/ti_36.html

“XCR”の称号を得る為に表生地が薄くなっているとすれば、冒頭で述べたプロテクション性能の低さもうなずけるものとなります。

また、参考ネタということでもう一つ。
”楽天市場”で”XCR”をキーワードで検索すると、”XCR”の称号を得ているシューズがズラ~っと表示されます。
いずれのシューズもカテゴリー的にライトトレッキング用の範疇を出ていないものばかりです。
それらは、表生地の厚さについて「ゼログラビティ65XCR」と比較した場合、ま、五十歩百歩といったところです。

ジャパンゴアテックスのホームページを見てみると、”XCR”との表示はシューズ中で”Extended Comfort Footwear”というカテゴリー内に掲載されている各商品名上でのみ存在しているようです。
他、カテゴリーと比較すると”Extended Comfort Footwear”のカテゴリーの説明文中に”運動量の多い激しい活動環境などに適しています”と記載が余分に加えられており、一定基準以上の防水透湿性を有するカテゴリーの様子ですが、”Extended Comfort Footwear”内で掲載されている全てのシューズが”XCR”との文言を冠しているわけでもなく、”XCR”を称するか否かは各メーカーの判断次第、と、いうことでしょうか?

しかしながら、”Extended Comfort Footwear”内で掲載されているシューズ以外に”XCR”と謳っている商品がない以上、事実上、
“Extended Comfort Footwear”=”XCR”=高い防水透湿性を有するライトトレッキングシューズ
と、いうことの様子です。

総括

「ゼログラビティ65XCR」を購入した経緯は”ユルユルソールで夏を楽に過ごす”をテーマで購入しました。
この靴を伴い、丹沢の低山から、南アルプスの高峰まで歩きましたが、物に万能ということはなく、力不足を感じざるを得ないシチュエーションが何度かありました。
それらについては、前項で諸々、問題点を述べてきましたがアッパーの強度とソールパターンを考えると、やはり、この靴は低山で土の上を歩くのが一番よく似合うと思います。


*スカルパ「ゼログラビティ65XCR」の概要記事はコチラ → スカルパ「ゼログラビティ65XCR」について(概要)

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