ロープ、スリング、カラビナ、全て安全を確保するのに重要な道具ですが、これらを使うにも”結び方”が悪ければ安全を確保する為の道具とはなりません。
それどころか、危険な道具に成り果てることになります。
結び方をマスターにする方法は…、反復あるのみ!
私は1mにカットした3mmの細引きとカラビナ一個を常に持ち歩き、暇な時にこれで練習していました。
あと、結び目の仕組みを理解すると自然に覚えることができ、使うべきシチュエーションが見えてくる。
用語説明
結び方の名称は、~ノットとか~ベント等と呼んでいます。
まずは、この意味から。
- ノット:ロープに結び目を作る
- ヒッチ:ロープを他のロープや他の物に結び付ける
- ベント:ロープとロープを繋ぎ合わせる
ことを意味しています。
この意味を理解していれば、名称を覚えるのに役に立つかも。
結び方各種
◎ノット系
- オーバーハンド・ノット
- サム・ノット
- スリップド・オーバーハンド・ノット
- フィギュア・エイト・ノット
- ダブル・フィギュア・エイト・ノット
- ダブル・フィギュア・エイト・ループ(ラビット・ノット)
- インライン・フィギュア・エイト・ノット
- フィギュア・エイト・ループ・ノット
- オーバーハンド・ループ・ノット
- ダブル・オーバーハンド・ノット
- ボーライン・ノット
- バタフライ・ノット
- ミュール・ノット
◎ヒッチ系
◎フリクション・ヒッチ系
- プルージック
- フレンチ・プルージック(マッシャ-)
- クレイムハイスト
- バッチマン:*バッチマンは諸事情により割愛
◎ベント系
オーバーハンド・ノット
◎別名:止め結び、固結び
これは皆さんご存じですね!
説明するまでもないと思いますが、念の為。
1.ループを作る。
↓
2.後、ループに差し込で完成。
オーバーハンド・ノットは、これ自体はあまり使い道がない。
オーバーハンド・ノットをベースに、結びが派生する。
サム・ノット
二本のロープをオーバーハンド・ノットで作ったもの。
懸垂時にロープ末端を繋ぐ時などに使う。
懸垂時に使用する場合、末端は50cmほど余らす。
スリップド・オーバーハンド・ノット
◎別名:引きとけ結び
この結びの特徴は、別名の如く、一方を引けば結びがほどけるというもの。
”オーバーハンド・ノット”と名称に付くように、オーバーハンド・ノットの変形。
1.ループを作る。
↓
2.ループに差し込む側を折る。
↓
3.折ったロープをループの裏側から差し込む。
↓
4.引いてもほどけない側を引いて完成!
フィギュア・エイト・ノット
◎別名:八の字結び
八の字結びは、ちょっとだけ取っ付きにくいが、理解すれば忘れなくなる。
1.オーバーハンド・ノットかのように、ループを作る。
↓
2.で、ここにロープを差し込んじゃうと”オーバーハンド・ノット”になっちゃう。
↓
3.なので、ここに差し込む。
つまり、オーバーハンド・ノットは一回転でループにロープを差し込みますが、フィギュア・エイト・ノットは一回転半でループにロープを差し込む。
↓
4.そろそろと両端を引いて”八の字”完成。
フィギュア・エイト・ノットは、これ自体では役に立たない。
フィギュア・エイト・ノットをベースに、結びが派生する。
ダブル・フィギュア・エイト・ノット
二本のロープを束ねてフィギュア・エイト・ノットを作る。
懸垂時のロープ末端を結ぶ時や、フィックスロープの支点工作時等に使う。
結び方は、「フィギュア・エイト・ノット」と同じ。
ダブル・フィギュア・エイト・ループ(ラビット・ノット)
1.「フィギュア・エイト・ノット」を作る要領で、ループを作る。
↓
2.で、差し込むロープ(画像ではテープ)は、ループにして差し込む。
↓
3.一旦、形を整えるべくこのように引き、結び目を締める。
↓
4.後、ループに潜らす。
↓
5.上のテープを引き、潜らせたループを縮める。
この際、作ったループの長さを調節可。
また、例題がテープなので、画像に記した部分を折り返しておくと、きれいにまとまる。
↓
6.「ダブル・フィギュア・エイト・ループ」の完成。
↓
7.作ったループをバラせば、「ラビット・ノット」の完成。
結び目
「ダブル・フィギュア・エイト・ループ」は、ループが二重になっている分、強度が上がる。
特徴としては、一方のループが切れても、片方のループは生きている。
「ラビット・ノット」は、ダブルランヤード等に使う。
例えば、鎖場のトラバースを進むとする(例では、ロープを鎖と思ってください)。
支点に差し掛かった際、まず、進行方向のカラビナを付け替える。
次に、もう一方のカラビナを付け替える。
このように使用することで、確保が途切れない。
インライン・フィギュア・エイト・ノット
これも、名称が示すとおり、フィギュア・エイト・ノットの変形体。
用途は、フィックスロープ等に使う。
結び方の前に、少々、前置きを。
自分の体をメジャーとして使えれば、何かと便利だ。
メジャーとして使えれば、何しろ、同じ長さのものが作りだせる。
例えば、昔ながらの言い方で言えば”一尋(ひとひろ)”等がある。
尋(ひろ)とは、腕を左右に大きく広(尋?)げた時の、指先から指先までの長さを言う。
一尋、と言えば、それが一回分のことだ。
ウィキペディアによると、一尋=六尺、で、約1.8mということになっているらしい。
ちなみに、私の一尋は約1.6mだ。
こんな感じで”私の一尋”を把握していれば、例えば、ロープの長さを測るのにも役立つ。
しかし、”一尋”の長さは人によって異なる。
両手の指をピンと張って1.6mに届く人もいるだろうし、私などは、指を気持ち折り曲げて約1.6mになる。
この方法を覚えておけば、”五尋!”と言われれば、糸なりロープを持って両手を広げ、五回繰り返すだけで8mになる。
メジャーをあてているわけではないので正確ではないかも知れないが、何しろ早い。
正確性よりもスピードが優先される時には打ってつけの方法だ。
人間の体の長さは、大体、
- 腕(指先まで含む)の長さ:60cm
- 肩幅:40cm
といったところだ。
つまり、片腕+肩幅で1m、というわけだ。
私は釣りも嗜むので、”尋”という言葉はよく使うし、この方法で釣り糸の長さを決め、カットしたりする。
くどいですが、この長さは人によって微妙に異なる。
なので、自分の体にメジャーを当てて確認しておけばよい。
そうすれば、40cm、60cm、1m、1.6mの長さのラインを立ちどころに作り上げることができる。
この項を作成するにあたって、改めて、自分の長さを確認してみた。
ちなみに、これで40cm。
指先からヒジの体よりのところまでです。
これを前提としまして、結び方に入ります。
1.40cmで測ったロープをループにして、画像のようにロープを折る。
↓
2.ループの先端を裏に回す。
↓
3.先端を作ったループに通す。
これで”八の字”になった。
↓
4.結び目を締めて完成。
結び目①
結び目②
外径約40cmのループが完成した。
これだけあれば、登山靴を突っ込むこともできる。
上部に、更にループを作っていけば、登降用フィックスロープが出来上がる。
何センチ上部にループを作るかも、先ほどの”尋”式を使えば簡単だ。
フィギュア・エイト・ループ・ノット
完成形の外観は「ダブル・フィギュア・エイト・ノット」と同じだが、結び方が違う。
例えば、こんな感じで物に結び付けることができる。
1.適当な位置に「フィギュア・エイト・ノット」を作る。
↓
2.ロープ先端を「八の字」を追うように戻す。
↓
3.戻す。
↓
4.戻す。
↓
5.結び目から出ている全てのロープを締め上げて完成。
結び目①
結び目②
オーバーハンド・ループ・ノット
「オーバーハンド・ノット」との違いは、ラインに巻き付けてオーバーハンド・ノットを結ぶことにある。
各結びの「末端処理」に使う。
1.上に被せる。
↓
2.下に抜く。
↓
3.ループに潜らせる。
↓
4.ループに潜らせたラインを引く。結び目が締まってきたら結び目をネジを回すように締め上げ、更に根本に寄せる。
↓
5.両ラインを交互に引っ張って、更に締め上げて完成。
ダブル・オーバーハンド・ノット
末端処理は、状況により一重で良い場合もあれば、二重にする必要があるものもある。
例えば、ロープをハーネスに「フィギュア・エイト・ループ・ノット」で繋ぐ場合、一重では締めが甘い。
普通、二重で処理する。
二重に巻くと「ダブル・オーバーハンド・ノット」ということになる。
1.途中、「オーバーハンド・ループ・ノット」と同じ。違いは二重にループを作るだけ。
↓
2.二重に巻いたループに潜らせる。
↓
3.ループを潜らせたラインを引く。結び目が締まってきたら結び目をネジを回すように締め上げ、更に根元に寄せ、完成。
◎「ハの字」について
「フィギュア・エイト・ループ・ノット」の結び目は、このようになっている。
裏。
結び目に出っ張り引っ込みができており、横からみるとこんな感じ。
この形状が原因で、末端処理が甘くなることがある。
フィギュア・エイト・ループ・ノットに末端処理を施した場合、失敗するとこんな感じになる。
通称「ハの字」と呼ばれるもので、結び目はこうなっている。
これだと隙間が空いており、締めが甘い。
これもダメ。
これが正常。
この隙間は、ロープ径が太くなればなるほど顕著になる。
ちなみに、例題で載せているロープ径は8mmです。
ハの字の原因は、ネジ回しが甘く、フィギュア・エイト・ループ・ノットに密着していないことが原因と思われます。
ボーライン・ノット
1.輪を作る。
↓
2.輪に潜らせる。
↓
3.再度、輪に潜らせる。
↓
4.幹を引いて完成。
この結びは、手早く何かに結び付けるのに適している。
作った輪を縮めるのは、ここに指を突っ込んでロープ先端をを引いてやればいい。
◎自分にボーライン
先に紹介した結び方は、何かに結び付ける時のものですが、自分にボーラインを結ぶ、ということであれば、これから紹介する結び方の方が早い。
1.ロープを自分に巻き付け、二つ折りにしたロープ末端を右手に持つ。
↓
2.右手を左手側ロープ上に持っていき、右手首を時計回りに捻って右手にロープを巻き付ける。
↓
3.右手で二つ折りになっているロープを左手側ロープの下を潜らせ、上に持ってくる。
↓
4.右手で二つ折りになっているロープをそのまま掴みつつ、右手首のループ内に引っこ抜く。
↓
5.完成。
◎リング荷重について
ボーライン・ノットは、一点対一点の場合は強い結束になる。
しかし、このようにリング内に複数点、荷重がかかる場合の結束は弱い。
このように、リング内に複数点の荷重がかかることを「リング荷重(負荷)」という。
例えば、前掲画像のような配置でカラビナを引くと、いとも簡単にほどけてしまう。
なので、このような使い方、例えば、リングにセルフビレイをとることは不可。
また、かつてロープとハーネスの結束は、ボーライン・ノットをもって繋いでいたそうだが、現在はフィギュア・エイト・ループ・ノットで繋ぐこと、とされている。
また、ボーライン・ノットを使用する場合、ダブル・オーバーハンド・ノットで末端処理をすること。
バタフライ・ノット
バタフライ・ノットは、フィックスロープ工作時等に使う。
インライン・フィギュア・エイト・ノットも似た感じでロープの途中にリングができるが、そのリングは上又は下向きになる。
バタフライ・ノットで出来上がるリングは、真横にできる。
これらは、荷重がかかる方向に合わせて使い分けることになる。
この結び目は、締め上げても固く締まらない特徴がある。
1.輪を作る。
↓
2.もういっちょ、輪を作る。
↓
3.上部にできた輪を下に反っくり返す。
↓
4.グルリンパ。
↓
5.形を整え、完成。
◎応用編
上の結び方でもいいが、現場での工作時は下に紹介する結び方の方が遥かに早く、確実に結べる。
1.”左手”に三回巻く。
↓
2.左端のロープを右にやる。
↓
3.新たに左端になったロープを右にやる。
↓
4.一番下に潜らせ、引っこ抜く。
↓
5.潜らせたロープを引ききって完成。
ミュール・ノット
懸垂時や引き上げ時等、作業途中でロープを仮固定するのに使う。
1.ムンター・ヒッチを土台としまして…。
↓
2.輪を作る。
↓
3.ロープ下部を輪に潜らせる。
↓
4.前掲画像、矢印始点辺りを持ち、引いて締め、完成
ミュール・ノットはこれで安心はできない。
ここを引けば簡単に解けてしまう。
なので、ミュール・ノットと抱き合わせのように、輪から引き出したロープをオーバーハンド・ループ・ノットで要留め結び。
◎注意点
前掲画像、赤丸部分について。
最後、締め上げる際、ミュール・ノットとムンター・ノットの間に隙間ができているとよくない。
ミュール・ノットを結び終わり、結び目から手を離すと”ガクン!”とショックが起きる。
極力、隙間を開けないこと。
◎応用編
感のいい方はもうお気づきと思いますが、この結びは片手でできる。
1.ロープを腕に一回巻き付ける。
↓
2.腕に巻いたロープの下部を取りに行く。その際、張っているロープとクロスさせる。
↓
3.取ったロープを引っこ抜く。
↓
4.締め上げて、完成。
この間、空いている片手はミュール・ノットを結び終わるまで、エイト環なり、環付カラビナなりに巻いてあるロープを押さえて(グリップビレイ)ロープが出ていかないように固定する。
ターン・ヒッチ
支点構築等に使う。
ターン・ヒッチの場合、その強度はこういうことになる。
前掲画像はペツルの資料で、22 kNの破断強度を持つスリングに付属の説明書を抜粋したものです。
資料の通り、巻き付けることで2倍の強度を持つ。
ラウンド・ターン・ヒッチ
支点構築等に使う。
強度はターン・ヒッチと変わらない。
ガース・ヒッチ(カウ・ヒッチ)
何かと議論が多い、ガースヒッチ。
それは、強度が低いことが明らかな為です。
*DMM取扱説明書より引用
この資料によると、ガースヒッチにより強度は50%以下に低減してしまう。
それは、このポイントに二本分の荷重がかかる、つまり、二倍の荷重がかかる為と思われます。
更に、スリングに荷重がかかれば、このように回転してしまう可能性が高い。
この場合、スリングのテープの”面”に荷重はかからず、テープ端の”点”に荷重が集中してしまい、強度は更に低下する。
これを回避する為にはどうすればいいんだろう?
捻っておけばいいか?
捻っておけば、まだ”面”荷重に近く、治まりがいいような気がする。
しかし、テープが捻じれたことによる強度低下がよく分からない。
”点”に荷重が集中するよりはマシ位のものか?
また、こんな感じになってしまったら最悪だ。
ちなみに、こんな実験データもある。
*DMMホームページ:Improvisation – Lark’s Foot or Basket Hitch? [Vid] – Knowledge – DMM Climbing Equipment. Innovative climbing gear, made in Wales.
と、これらの問題があることを認識して使用する必要がある。
クローブ・ヒッチ
◎別名:インクノット・マスト結び
1.輪を作る。
↓
2.もう一つ輪を作る。
*ロープの重なりに注意。
↓
3.輪を重ねる(右の輪を左の輪の下に重ねる)。
↓
4.カラビナをフック。
↓
クローブヒッチで、立木等に結び付けることができる。
1.巻く。
↓
2.もう一回巻く。
↓
3.
↓
4.締め上げて完成。
これは、登山道沿いに設けられた進入禁止の柵等に使われている。
この結びの仕組みは、前工程”3.”状態を被せてみれば、よく理解できる。
更に、片手でカラビナフック方法。
1.輪を作る。
↓
2.この向きでカラビナにフック。
↓
3.締め上げて完成。
クローブ・ヒッチの練習をしていると、何故かムンター・ヒッチが出来上がることがある。
まあ、結び方を間違えているわけですが、いつもならクローブ・ヒッチが結べるのに、現場で、”クローブ・ヒッチ!”と言われると頭が混乱し、ムンター・ヒッチになっちゃうこともある。
私の場合、こんな感じでパターン化しています。
1.人差し指を添える。
↓
2.時計周りで、指に一回巻き付ける。
↓
3.人差し指に巻いた結び目を裏に回し、カラビナにフック。
↓
4.で、締め上げれば完成です。
ちなみに、指に巻き付けるのを”反時計回り”にすると…。
出来上がるのは”ムンター”です。
クローブ・ヒッチの特徴は、ロープが引かれれば引かれるほど強く締まる、というものです。
なので、人に対して、クローブ・ヒッチは絶対に使わないこと。
◎更に簡単な結び方
1.
↓
2.奥側のラインを握る。
↓
3.捻って手前に持ってくる。
↓
4.カラビナにフック。
↓
5.完成。
ちなみに、手前のラインを握って…。
似たような感じで捻って…。
カラビナにフックすると…。
出来上がるのはムンター。
ムンター・ヒッチ
◎別名イタリアンヒッチ、半マスト結び
レスキュー、確保、懸垂下降等に使用する。
ロープ双方が引かれると、結び目が締め上げられロックする。
ロープ一方を緩めれば、緩めた程度に応じて、ズルズルとロープが出ていく。
1.輪を作る。
↓
2.カラビナにフック。
↓
3.ロープを引いて完成。
クローブ・ヒッチの項でも説明しましたが、何も考えず、パターン化すれば簡単に覚えられる。
1.人差し指を添える。
↓
2.反時計周りで、人差し指に巻き付ける。
↓
3.カラビナにフックすればムンター。
◎通称サムライムンター
懸垂時等、直線的なロープにムンターを施す際に便利な結び方。
ムンターを結ぶ際、ループを作ることができない位ロープがギッチギチに張られていても結べる。
1.カラビナをフック。
↓
2.時計回りにカラビナを回す。
↓
3.カラビナをロープの下にもぐらせる。
↓
4.そのままフック。
↓
5.完成。
この一連の流れは、カラビナをビレイループに接続したままでも可能です。
ダブル・ハーフ・クローブ・ヒッチ
この結びは、ムンター・ヒッチにロープをもう一重巻き付けたもので、制動力が更に上がる。
1.ムンター・ヒッチを作る。
↓
2.前掲画像、白矢印起点辺りを引っこ抜く。
↓
3.引っこ抜いたロープで、ループを作る。
↓
4.ループをカラビナにフック。
↓
5.幹を引いて完成。
この結びも、指に巻き付け方式で結べる。
1.反時計周りで、指に二回巻き付ける。
↓
2.こんな感じで持ってって…。
↓
3.カラビナにフック。
↓
4.幹を引いて完成。
ダブル・ハーフ・クローブ・ヒッチは、ある資料によると空中懸垂にも耐えられる制動力を発揮する。
ダブル・ハーフ・クローブ・ヒッチ(ムンター・ヒッチ)を”引き上げ”で使用するなら、ロープの流れは然程意識しなくても済むが、”懸垂”で使う、となると話しは異なる。
つまり、スクリュー(ゲート)にロープが干渉しないようにロープを配さなければならない。
1.カラビナにロープを通す。
↓
2.反時計周りで二回(ムンターなら一回)、ロープを指に巻き付ける。
↓
3.カラビナにフック。
↓
4.これで”ダブル・ハーフ・クローブ・ヒッチ”の出来上がり。
↓
5.カラビナ反転。
↓
6.ゲートロック。
↓
7.完成。
トートライン・ヒッチ
◎別名:自在結び
この結びは別名の如く、ロープの長さを調節するのに適している。
1.車のハンドルを例といたしまして…。
↓
2.幹にオーバーハンド・ノット。
↓
3.ちょっと離して、オーバーハンド・ノット。
↓
4.続けて、並びに一回巻く。
↓
5.更に、もう一回、オーバーハンド・ノット。
これで完成。
”自在”として機能させるには、まず、ここを引いてピンと張る。
後、ここをスライドさせる。
自在結び、ということで、自在を使うようなシチュエーション、例えば、テント・ツエルト等の設営に活躍する。
いくら引っ張っても緩むことはない。
ところで、この結び目、どこかで見たような…。
そう。
トートーライン・ヒッチは、”ダブル・ハーフ・クローブ・ヒッチ”の親戚です。
ダブル・ハーフ・クローブ・ヒッチに、末端処理はクローブ・ヒッチ、とでも言うべきか?
プルージック
フリクション・ヒッチ系の代表格のプルージック。
簡単に覚えることができる。
1.
↓
2.内側に巻く。
↓
3.更に内側に巻く。
↓
4.更に内側に巻く。
↓
5.ダブル・フィッシャーマンズ・ノット側にカラビナをフックして完成。
プルージックは荷重がかかると締め上がり、ロックする。
スリングの巻き付け面に均等に締め上がるのではなく、ピンポイントで締め上がる。
荷重の程度にもよると思いますが、実際、手で引いている位の荷重では、この辺りは指で動かせる。
この辺りでも動く。
この辺りはキツく締まっている。
このように、ピンポイントで荷重がかかる為、
- ロープを傷めるリスク
- スリングを傷めるリスク
がある。
また、強い荷重がかかるときつく締まってしまい、スライドしなくなってしまう。
これらが理由で登攀ではプルージックはマイナーになりつつあるらしい。
しかし、フリクション・ヒッチ系では唯一、片手で結べるので重要な結び方なので、ないがしろにはできない。
フレンチ・プルージック(マッシャ-)
引上げシステムのバックアップ時等に使用する。
1.
↓
2.巻く。
↓
3.同様に三回以上巻く。
↓
4.カラビナをフック。
↓
5.下に出来ているループにもフック。
↓
6.完成。
マッシャ-には方向性がある。
ロープが出ていこうとする時は結び目が締まりロックする。
逆の動きの場合は締まらない。
結び目が締まり、ロープがロックした場合、具体的にはこの部分が締まる。
結果、プルージックと比較するとロープの摩擦面は広くなり、ロープ・スリングのダメージは低くなる。
このように締まるのは、スリングが上下から引かれていることによる。
クレイムハイスト
1.
↓
2.巻き付ける。
↓
3.更に巻く。
↓
4.下のループを上のループに通す。
↓
5.カラビナを引っかけて完成。
巻き付け方はどちらでもいいかと思いますが、しいていえば、フレンチ・プルージックの場合は、下から上に向って巻き上げる、といったイメージですが、クレイムハイストの場合は、下に巻いていくイメージ。
実際、荷重がかかると、上のループは下のループに引かれる。
この効果により、ロープに巻き付けたループは上下から締め上げられ、フレンチ・プルージック同様、摩擦面は広くなる。
ただし、フレンチ・プルージックに比べ、”遊び”が少なく、一旦締め上がると緩みにくくなる。
こんな感じで、支点の構築にも使用できる。
この結び方、どこかで見たことありますよね~。
そう。
ガース・ヒッチと仕組みは同じです。
複数回巻き付けているので、ずり落ちてこないです。
リングベント(テープ・ノット)
テープが無いので、代わりにスリングにて。
1.テープをオーバーハンド・ノット。
↓
2.テープを差し込む。
↓
3.後は、先に作ったオーバーハンド・ノットの結び目を追うだけ。
↓
4.結び目を締め上げて完成。
ダブル・フィッシャーマンズ・ノット
1.ロープを並べる。
↓
2.上に被せて…。
↓
3.ダブル・オーバーハンド・ノットで結ぶ。
↓
4.反対側も上から被せて…。
↓
5.ダブル・オーバーハンド・ノットで結ぶ。
↓
6.結び目は、このようにガッチリ噛み合わなければならない。
↓
7.それに対して裏側は、キッチリ揃わなければならない。
↓
8.ロープ径の10倍、遊びを持たせるように調節する。
*サンプルの補助ロープは5mm径。
↓
9.最後にペンチでもって、出ている全てのロープを締め上げて完成。
*画像は締め上げていません。
シート・ベント
スリングとスリングを連結する時等に使う。
簡易ハーネス作成時にも使用。
スリング連結時に、スリングの太さが異なる場合、細いスリングで結ぶ。
1.スリングに結ぶ方のスリングを通す。
↓
2.巻く。
↓
3.要するに、スリングに巻き付けつつ、オーバーハンド・ノットで結ぶ、ということ。
↓
4.完成。
このままでは、この部分がすっぽ抜ける可能性がある。
なので、こんな感じで結んだスリングを通してやる。
バックアップも完成。
簡易ハーネス作成時は、バックアップを施したループにカラビナをぶら下げる。