山行記録
◎2013.1.30(Wed) 天気:晴れ 気温:0.6~6.5℃
◎コース:08:18ゲート-09:10稲荷川展望台-09:40洞門岩-10:49友知らず-11:26雲竜瀑12:39-12:57友知らず-13:04洞門岩-14:01稲荷川展望台-14:37ゲート(行動時間:6時間19分)
◎標高差:約640m
最高点の標高: 1446 m
最低点の標高: 928 m
累積標高(上り): 672 m
累積標高(下り): -663 m
”厳冬期低山”。
2年前、山と渓谷で特集されていたテーマですが、同記事中”雲竜渓谷”の蒼氷の巨大さに圧巻させられる。
”行きたい!”
かねがね、そのように思っておりました。
今回、その私の気持ちに同調いただいたT川氏とS本氏両名と共に横浜を04:00に出発。
今回の計画で、私が最も心配していたのは山中でのことではなく、登山口までのアプローチ。
どうも、下調べしていると、登山口に辿りつくまでに難渋するケースがある様子ですが、幸いここ一週間天気は良かった。
途中でタイヤチェーンを装着したものの、現地到着は07:30頃。
既に、林道ゲート前は満車。
林道ゲート前へ至る手前でもバラバラと路肩に車が駐車されていました。
この林道は変な言い方ですが、”生きている”。
忘れ去られたかのような、時折、使用されるような道ではなく、連日のように工事車両が通過する様子で、それを示す工事スケジュールが林道ゲート前に貼りだされている。
我らも通行の邪魔にならないよう、路肩深くに車を駐車することにする。
時計の気温計で0.6℃。
ぼちぼち準備して出発。
08:18ゲート
林道ゲート手前に5台程度の駐車スペースがある。
先ほども申し上げましたが、その駐車スペースは画像の如く既に満車となっている。
07:30頃には付近に到着していましたが、駐車スペースを探したり、タイヤチェーンを装着したりと時間を喰い、この時間になり、ようやく出発。
本日予定のルートは、この林道ゲートより稲荷川に沿って雲竜渓谷散策。
同ルートをなぞるようにピストンで下山。
そんなルートを予定しています。
このルート。
ヤマケイの同特集でブレイクし、相当数の登山者が入山しており、今やメジャールートと言って過言ではないかと思いますが、そのルートを示す具体的な資料は少ない。
私もそれなりに下調べをしてきた。
特に”沢ルート”は渓谷を進むこともあり、途中で堰堤を高巻く必要があることから、トレースをキッチリ追う必要がある様子。
まずは林道を進む。
”林道”ということで、ここは工事車両が通行する。
林道ゲート手前までは、一般車両が多数通行することもあり、路面はアイスバーンとなっていた。
この林道上は工事車両が通行するのみで、轍すらアイスバーンとはなっていない。
この先、暫し林道歩きが続くこともあり、アイゼンを外す。
また、暑い!
前日の天気予報によると、栃木県北部の最低気温は-5℃となっていた。
”山はどれだけ寒いか?”用心していた私達はそれなりに着込んでいましたが、あまりの暑さに上着を脱ぐ。
そんなことで、この間数度立ち止まり、意外に時間を喰う。
↓
09:10稲荷川展望台
最初の目標点に到着。
展望台に登ると、双眼鏡が設置されている。
その展望はこんな感じ。
林道上から稲荷川を目視することはできませんでしたが、ここに来てようやく望む。
あの広い河原をこれから奥へ奥へと進むことになる。
期待を胸に、先へと進む。
途中、間際らしい感じで分岐が一つある。
ここを右に曲がれば稲荷川に降りる。
ここは直進。
↓
09:40洞門岩
”洞門岩”は、”沢コース”と”林道コース”の分岐点。
工事車両の中継基地か?広々とした空間になっている。
画像で写っている車両は国交省の方の様子で、ライブカメラの管理をされている、とのこと。
さて。
分岐ということで、”沢コース”か”林道コース”かを選択しなければならない。
”林道コース”は不安個所ゼロの様子ですが、先ほど”稲荷川展望台”から望んだあの河原に立ち降り、沢を奥へと詰めていきたい!
ここは予定通り、”沢コース”を選択することにし、アイゼンを装着。
で、稲荷川に降り立つ。
で、いきなり渡渉!
気温が高いこともあり、岩の頭は濡れてはいても氷ってはいない。
ストックを補助にして渡る。
で、頭を上に上げるとこの景色!
”渓谷感”が滲み出てきた!
更に河原を進み、両岸もだいぶ狭まり、最初の高巻き取付き。
渡渉・高巻きについて、決まったルートなどは無い。
渡りやすいところ、歩きやすいところを進むだけ。
画像取付き地点で言えば、テープでルートを誘導してくれてはいる。
しかし、高巻くべきところを高巻かないと、前には進めない。
前掲画像で言えば、沢は左奥へと続いており、そちら方面へキッチリトレースがついている。
そのトレースを追い、沢に沿って左奥へすすんでも途中で沢の流れが往く手を阻み、後戻りするだけ。
このようなポイントでは、皆さん迷うのか?トレース散乱しています。
で、再度、稲荷川に降り立つべく、下降。
ルート中、私が見かけた最初で最後の補助ロープあり。
で、降り立った後、頭を上に上げると次の高巻きが控える。
高巻き取付きまでの間、数度の渡渉が控える。
やはり、本日は気温が高い為か?凍結部分も緩い。
このような渡渉点でも、氷の足下は”沢”という箇所が多数有り、時折、崩れる。
なお、画像中”沢奥”としている個所の先にはこん景色が控えている。
”引き込まれる…”。
正にそんな感じで、この景色に圧倒された同行二名はこの景色に引き込まれるように、当然のように沢奥へと進む。
この辺りもトレース散乱です。
この高巻きを登りきれば、”沢コース””林道コース”の合流点となる。
このように広々とした空間になっており、林道コース伝いで工事車両はここまで至ることが可能です。
で、再度、稲荷川へと下降。
下降は画像、右下隅に写っている傾斜が急な階段を利用する。
階段の”段”は全て雪で覆われており、斜面と化している。
画像左上隅で谷が狭まっている個所が”友知らず(友不知)”の入口。
ここまで来ると、流石に積雪は多くなる。
トレース上はまったく問題無し。
トレースを外れると膝位、といった感じです。
↓
10:49友知らず
ここより先が雲竜渓谷のクライマックス!!
この氷の回廊を進む。
この回廊を進むには若干の注意を要する。
沢上も飛沫で氷っており、薄い個所に乗ると踏み抜く。
薄いところに乗らないよう、沢の流れを想像しつつ、進む。
本日は天気が良く、気温も高い。
この回廊中で時計の気温計を確認すると、2.4℃と、氷点下を上回っている。
私はここを初めて訪れるので、この両サイドから垂れるツララが成長しているものなのか?そうでないのか?判別不能。
しかし、この気温を考えれば素人考えでも、あまり成長していない、若しくは多数落下してしまったような気がしないでもない。
これらツララを伝って、水がしたたり落ちている。
しかし!
この陽に照らされ、キラキラと光る蒼氷の壮大さには圧巻!
友知らずを抜け、後を振り返ると同行二人は口を開け、その眼は上を望んでおり、圧巻させられている様は言わずとも手に取るように解る。
そう!
そうなんです!
そのように口をポカ~ン…と開け、上を望まざるを得ない!
私のその図はあいにく残っていませんが、私もきっとそうなっていた!
画像にあるように、距離にしてみれば100mあるかないかのこの短い回廊。
この短い回廊を抜けるのに10分程要す。
友知らずを抜けると、巨大な氷柱に度胆を抜かされる。
やっと、でた!
ようやく、ヤマケイの記事を見て、忘れられない景色となった巨大氷柱をこの眼で臨む。
ヤマケイではこの氷柱の裏に回り込んでいた。
我らも”回り込むべきか…”悩む。
このエリアに入って早々、ツララの落下を目の当たりにする。
その落下は何の前触れもなく、”ガッシャ~ン”と落下した結果だけを教えてくれ、狭い谷にその音は鳴り響く。
クドイですが、本日は気温が高い。
かつ、ツララが陽に照らされている。
陽に照らされているからこそ、この蒼さが光る、というものですが、その美しさとは裏腹に危険が潜んでいる。
しかし、ここまで来たからにはこのオーバーハングの裏に回り込まない選択肢はないであろう。
確率の低いロシアンルーレット。
勇気を出して、ササッと裏に回る。
私は写真がヘタだ…。
一番良く撮れてこの位。
しかし、この写真ではこの氷柱群の迫力はまったく伝わらない。
この迫力を味わいたい方は、ご自分の目で見てください。
こんなものではありません!
さて。
ヤマケイで掲載されていたのと同様のアングルで撮影するべく、更に奥へ進もうとすると…。
足場の氷が融けている…。
水溜りが氷ったように、真っ平の平面になっているのですが、そこへ足を置くと”バリッ”と割れ、氷面は水溜りへと戻った。
やはり、気温が高過ぎる。
この光景を見た私達は危険を感じ、この危険地帯を後にする。
ふと気づくと、正面に”雲竜瀑”を望む。
↓
11:26雲竜瀑12:39
氷柱群に魂を奪われ、雲竜瀑のことをスッカリ忘れていた。
前掲画像は麓から望んだ雲竜瀑。
ここからでも迫力はありますが、この迫力の本髄を味わう為には本ルート中、最大の難関であるハズの雲竜瀑左岸を高巻かなければならない。
今立っているこの場から、そのルートがよく望める。
雲竜瀑方面へ折り返す辺りが傾斜が急で、皆さん踏ん張るのか?土が露出していて滑り易そう。
取付きの傾斜角はこれ位。
斜面の状況。
キックステップの跡が残り、段になっている。
よく踏み固められているものの、この斜面をアイゼン無しで登る人は居ない。
結果、その刃でよく耕され、滑りやすい、ということはない。
斜面を登り切り、後、雲竜瀑方面へトラバースする。
トレースは切り立った斜面で、その幅は細く、すれ違い時には難渋し、その場所は限られる。
最もトレースが痩せている場所は、最も切り立っている場所でもある。
前掲画像土部分がトレース。
ストン、と切れ落ちており、ここでヘマはできない。
画像に草が生えていますが、その先画像が切れている下部分は既に斜面。
で、この難所を超えると、ようやく雲竜瀑を望む。
え~…、スミマセン。
雲竜瀑の迫力はこんなものではありません。
撮影者の能力により、こんな程度にしか写真に残せませんでした。
記念撮影を一通り済まし、飯を喰うことにする。
時計の気温計を確認すると、時計が陽に温められたのか?6.5℃!?
しかし、実際暖かい。
今居る私の恰好は、上はアンダーシャツの上にフリースのみ。
渓谷中では寒風が吹きぬけることもあり、多少の寒さを感じたが、陽に晒されている今はこの恰好で丁度よい。
雲竜瀑脇の斜面にアイスクライマー1パーティー取付いている。
ツラツラと眺めていると、落下!
アイススクリューの効きが悪いのか?確保の支点は全て抜け、下まで落ちた。
高低差がたいしたことなかったので、大事に至らなかった。
何事もなかったように再開する。
後からもう1パーティー来るものの、氷の状態が悪いのか?取付かず、名残惜しそうに撤退。
我らはといいますと…。
この長閑な空気の中、マッタリと過ごす。
同行T川氏は、この日の為にあれやこれやと道具を買い込んだ。
ガソリンストーブも買い込み、使い方だの、喰い過ぎて腹がイッパイだの、なんだのかんだのウルサイ位に過ごす。
この場所は一種、公園状態で暫しノンビリしておりましたが、陽は傾き、谷の影が濃くなる。
「ぼちぼち帰るか」ということで、下山開始。
なお、云い忘れましたが滞在中、ツララの落下音を耳にしたのは、4~5回ほど。
小石程度の落下は数知れず。
雲竜瀑の近くに居た時は、”ゴツッ”と鈍く、重い音が氷瀑より発する。
ツララが落下した場合、その巨大な氷はバラバラとなる。
その氷は一部、トレース上まで達します。
画像は雲竜瀑の麓。
画像では小さく見えても、画像中”氷”と認識できるサイズは人の頭、若しくはそれ以上のサイズがある。
これに当るか当らないか?
”気を付けろ!”と言っても、予告無しに落下してくるツララに対してその言葉は無力すぎる。
確率の低いロシアンルーレット、みたいなものです。
今回はピストンなので、下山はアッサリいきます。
↓
12:57友知らず
↓
13:04洞門岩
↓
14:01稲荷川展望台
↓
14:37ゲート
無事、帰還。
時計の気温計で2.8℃。
”なぜ、氷が蒼くなるのか?”
その理由は科学的に説明可能だとしても、そんなことはどうでもよい。
理屈無しに素晴らしい景観に今回は圧巻させられました。
なお、下山時は陽が傾き、谷に陽が射しこまなくなると景色はこうなっちゃいます。
巨大氷柱に陽が当らなくなり、蒼さが際立たなくなる。
雲竜渓谷へ行くなら、午前中~正午が圧倒的にお勧めで~す!
本日は寄道せず帰宅。