モンベル「ダウンハガー 800 #3」vs.モンベル「ダウンハガー900 #5」+モンベル「EXライトダウンジャケット」(保温性能確認実験)

今回は、久々に実験ネタということで…。
シェラフの保温力を確認してみた。

今回の確認事項は、”無雪期において、どのグレードのシェラフを購入したらよいのか?”です。

山で寝る場合、想定の最低気温はどの位で見ておけばよいのか?
当然、季節、標高によりその想定気温は異なるが、想定の環境として、夏~秋のアルプス系としたとする。
アルプス系は山深く、日帰りが難しい山が多く、雪が付くとハードルはかなり高くなる。
そんなことで、”夏~秋のアルプス系”というのは、テント泊のニーズが強いケースの一つではないでしょうか?
そのケースが例えば、3000mクラスを念頭に置いたとする。
この場合、一般論として”100mで-0.6℃”という目安があるので、標高3000mでは平地と比べて18℃気温が低い、ということになる。
ということは、真夏で所謂”熱帯夜”という日では、3000mでの最低気温の目安は7℃以上、ということになる。

また、雪が付くギリギリ位という意味で、3000mクラスの紅葉時期である10月上旬辺りではどうか?
2013年10月1~10日の松本で、最も気温が低かったのは4日の13.6℃。
*参考:松本 2013年10月(日ごとの値) 主な要素(気象庁ホームページへリンク)
松本の気象観測所の標高は610mなので、”100mで-0.6℃”ルールを当てはめれば、この日の北アルプス3000mでの最低気温は、-0.8℃、ということになる。
この気温では、霜がはるし、水溜りは凍る。

余談になるが、昨年10月中いっぱいでの松本の最低気温を見ると、28日に最低気温2.3℃を記録している。
”100mで-0.6℃”ルールを当てはめれば、この日の3000mクラスでの最低気温は-12.1℃ということになり、10月も中旬以降になると3000mクラスでは冬山と変わらなくなる可能性があるので、相当な注意が必要な状況となる。

前置きがかなり長くなりましたが、現実の標高3000mでの気温データではなく、あくまで気象庁のデータから追っかけた想定上の気温ではありますが、夏~秋にかけて3000mクラスでの最低気温の下限は-1℃位が一つの目安、と言えると思います。
そりゃそうか。
これ以上気温が低くなると、雨が降ればそれは雪になってしまい、”積雪期”となってしまう。

上記前提に基づいて、私が所有するシェラフを見てみた。
モンベル「U.L.スーパースパイラルダウンハガー #3」(現、「ダウンハガー800 #3」)の保温性能は、モンベルホームページによると、

  • コンフォート温度:5度
  • リミット温度:1度
  • エクストリーム温度:-10℃?(旧表記”使用可能限界温度”による)

上記対応温度の計測は、”長袖と足首までアンダーウェアを着せ…”たマネキン内部の温度の変化に基づいた計測である。
アンダーウェアのみ着てシェラフに潜り込むのは、あっても真夏位であろう。
普通、気温が20℃を下回り、行動を停止して体は冷え、更には夜で陽射しもない、ということであれば、Tシャツ一枚ではうすら寒く感じるものである。
寒ければ、それに応じて服を着て寝るのが普通だと思う。

とすれば、カタログデータ上、リミット温度は1℃とされているが、普通に服を着て寝ることを前提にすれば、そのリミットは、もうちょっと高いところにあり、-1℃は許容範疇と思われる。
つまり、「ダウンハガー800 #3」は、無雪期全期間において対応可能なモデルと思われる。
”無雪期全期間において対応可能なモデル”と、上で私は言い切ったが、私は”EN 13537”形式で言うところの”リミット温度”で十分な性質である。
寒さの感じ方は人それぞれ異なる(特に女性)ので、寒さに敏感な方は、それ相応の対応が必要になります。

他、山でテント泊をしよう等と考えている人間は、その際、併せてこれを持参されている人は多いと思います。
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インナーダウン。
私が所有しているものは、モンベル「EXライトダウンジャケット」です。
このジャケットが採用しているダウンのロフトは、900フィルパワーある。
単純に、これを着てシェラフに潜り込めば暖かいことは説明するまでもない。

では、具体的にどれほど暖かくなるのか?

例えば、モンベルの”#5”シリーズと、このインナーダウンを組み合わせて寝た場合、保温性能は、いかほど”#3”シリーズに迫ることができるのか?
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それが今回の確認内容です。

保温性能の確認はいつもの通り。

まずはペットボトルに湯を詰める。
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現在、湯温は70.0℃。

これを三本作る。
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一本は比較用に、なにも被せず放置。
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一本は、「ダウンハガー800 #3」の胸の辺りにセット。
一本は、「ダウンハガー900 #5」+「EXライトダウンジャケット」を組み合わせ、胸の辺りにセット。
ダウンにセットしたペットボトル周りは、隙間ができないように、気持ちロフトを潰した。
「EXライトダウンジャケット」の袖は、実験に影響しないように外に出した。
他、マットは敷いていない。

で、タイマーを一時間でセットし、カウントダウン開始。
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一時間後、両ダウンにセットした湯温を確認することで、保温性能の優劣を確認する方法です。

で、一時間経過。
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まずは、比較用に放置しておいたペットボトル。
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46.6℃。

次は、「ダウンハガー800 #3」。
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58.7℃。

最後は、「ダウンハガー900 #5」+「EXライトダウンジャケット」。
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58.8℃。

際どく、「ダウンハガー900 #5」+「EXライトダウンジャケット」の方が高い数値を出しましたが、その差は0.1℃で、これは誤差範囲内。
結論は、

「ダウンハガー 800 #3」=「ダウンハガー900 #5」+「EXライトダウンジャケット」

の保温性能ということになりそうです。

つまり、「ダウンハガー900 #5」+「EXライトダウンジャケット」の組合せは、EN 13537での表記方法で言えば、

  • コンフォート温度:5度
  • リミット温度:1度

に近い、と言えると思いますし、「EXライトダウンジャケット」を着用してシェラフに潜り込む、ということは、

  • コンフォート温度:+5℃
  • リミット温度:+4℃

の効果がある、と言えることになると思います。

故に、無雪期において必要なシェラフは、「ダウンハガー900 #5」+「EXライトダウンジャケット」で十分、という、私なりの結論に至ります。

むしろ、シェラフとインナーダウン、異なるパーツに分離可能で、使い勝手が良くなる。
”ウルトラライト”的発想で言えば、この方が理想的ではある。
言い方を変えれば、対応できる気温にゆとりが無い、とも言える。
または、オーバースペックでない、とも言える。
この辺りの判断はケースバイケースですし、読者の皆さんにお任せします。

*EN 13537による検査内容は、私の実験のような単純なものではありません。(参考:ウィキペディア


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