グリベル「エアーテックエヴォリューション」について(シャフト長考察)

”雪山に行きたい!”その一心で買っちゃいました。

身長173cmの私が購入したアックスのシャフト長は53cmですが、その思考回路は、

理論 → 商品検討 → 購入

ではなく、

”エアーテックがほしい!” → その理由づけ → 購入

といった流れになっています。

どのような”その理由づけ”となったのか?
今回は、我がままに記事にしてみたいと思います。

初めてこの道具を購入するにあたり、当然悩んだのが”シャフトの長さ”。

その私の悩みとまったく同じ悩みを抱えている方をヤマレコで拝見しました。
*この方 → 最初の一本ご教授お願いします

そうなんですよね~。
カッコいいんですよね~、グリベル「エアーテックエヴォリューション」。
ちなみに、文中で出てくる”八ヶ岳のガイドさん”とは、恐らくこの方と思います。
*この方 → web登山教室

上のリンクであげている「ミキヤツ登山教室」さんによる説明は詳細で、私がエアーテックを選択するのに充分なヒントを与えてくれました。

その”ヒント”とは?

一言で言えば、アックスの機能のメインを”杖”として使うのか?というものです。

例えば、純粋に杖であるトレッキングポール。
私が雪山で使用するのはLEKI「SPDサーモライトXL」なのですが、三段組のシャフトを縮めた状態で67cm。

伸長時で、目盛が刻まれているのは105cmから。

つまり、アックスに”杖”としての機能を重視するなら1mとは言いませんが、それに近いものがないと杖としては中途半端なんではないのかと…?

ちなみに、先日登った八ヶ岳は文三郎尾根。
298-12.jpg

恐らく、月曜に降雪があり、その週の水曜日に登ったものです。
トレースはあるもののガッチガチに踏み固められてはいない。
この傾斜角、雪質の中、左手にトレッキングポール(105cm)、右手にアックス(53cm)を握りしめ登ってみました。
登る為の補助としてはトレッキングポールの方がはるかに役に立ち、アックスは普通の歩行では石突きが雪面まで届かない。

降りにおいても、堅氷という訳ではないので、滑落の不安はなく、トレッキングポールの方が使いやすい。
298-14.jpg

なお、参考。
299-3.jpg

前掲画像は、グリベルの”S.A.シャフト”のメリットを説明する為の画像です。

一般論(かつて?)として、ピッケルの長さは”ピッケルは手に持って下に垂らしたときに、石突きが足首部分にくるものを選ぶ…”とされているようで、この引用は先にご紹介した”ミキヤツ登山教室”さんによるものです。
説明の絵は、正に”杖”として利用した場合の説明なわけですが、その絵では”ピッケルは手に持って下に垂らしたときに、石突きが足首部分にくるものを選ぶ…”どころの長さではなく、”ピッケルは手に持って下に垂らしたときに、石突きが足裏10cmでる位のものを選ぶ…”位の長さになっているようです。
実際、”杖”の機能を重視するなら、この位の長さは必要に感じます。

説明の絵や、先の文三郎尾根中腹の傾斜角・雪質コンディション位であれば、トレッキングポールを補助として利用しても恐怖はありませんが、更に傾斜がキツクなるということであれば、このような感じになると思います。
299-2.jpg

前掲画像はやはり、グリベルの”S.A.シャフト”に関するもので、シャフトが湾曲しているメリットを説明しているのですが、私が注目したのはその事自体よりも例で描かれている雪面傾斜角。

その角度はパッと見、45°を超え50°はある。

この傾斜角の中、雪面上でトレッキングポールを使おうとすれば恐怖で使えない。
やはり出番はアックスといったところでしょうか?

夏山で考えれば、説明の絵以上の傾斜角がでてくる所といえば”鎖場”。
文三郎尾根~赤岳山頂間で考えれば、山頂直下の岩場。

説明の絵位の傾斜角の中、この絵の如くアックスを雪面に突き立て、手掛かりとするのであれば、雪面上に石突きをあてるのは腹~胸元位の位置になってくると思います。

具体的には、まず、アックスを上へ振り上げ、後、石突きを雪面に刺し込む。
この作業はシャフトが長いと大きく振り上げざるを得ない。
つまり、アックスの本領を発揮すべきシチュエーションにおいて、長いことが仇になりかねない。

「ミキヤツ登山教室」さん曰く、”体の前で自由に振り回せる程度”の長さが丁度よい、とのご説明は、アックスの本領が発揮されるべき、この辺りのシチュエーションを念頭にされていると思われます。

この”体の前で自由に振り回せる程度”の長さについて、具体的には”肩から手首の長さ程度がよい”とご教授されており、”もっともだ…”と思った私はシャフト長53cmを選択した次第です。

なお、私はこの道具をいままで使用した経験はありませんが、過去の山行において本能的に”アックスがあったらな~”と思わされたのは以下のようなシチュエーションです。

これは丹沢「畦ヶ丸」~「権現山」の稜線上です。
難所④

画像の如く、距離は短いですがエッジ状に切り立っており、ここでヘマすれば、右側の斜面であれば100m位、左側の斜面であれば50m位一気にいっちゃいます。

この時は、足にはモンベル「チェーンスパイク」
手にはトレッキングポール。
といった装備内容です。

モンベル「チェーンスパイク」では、爪が浅さ過ぎ、この積雪量では雪面上を撫でるだけでまったく用をなさない。
また、この傾斜角だと、トレッキングポールではなんの支持・補助にもならない。

私がこの斜面をどのようにクリアしたかといいますと…。
エッジの根元までソロソロと降り、カッコ悪いですがエッジに馬乗りになってようやくクリア、といった状況でした。

その約一年後、同場所を訪れました。
DSCF3035.jpg

前掲画像は、反対側から撮影したものです。
この写真を撮った時に偶然、単独行の登山者がこの場所を通過している最中だったのですが、私があれほど難渋したこの場所をスラスラと通過している。
その方の出立は、足には12本爪のアイゼン。
手にはアックス。

このように通過していました。
299-4.jpg

赤のラインが足の置場。
オレンジのラインがアックスの石突きを刺していた場所。
スラスラと通過するその光景を目の当たりにした私は”12本爪とアックスはここまで強力か…”と思い知らされました。

次はコレ。
P911取付点

西丹沢「本棚」右岸を高巻き、畦ヶ丸へ向かうコースです。

先のエッジ状を通過する前にこの尾根を直登しました。
取付き周辺はまだ傾斜が緩いですが、10分も登ると私にしてみれば正に”壁”。
足を固めるのはチェーンスパイクで、やはり雪面上を撫でるだけ。
その内、ポールが使えるような傾斜角ではなくなり、立木のみを頼りに登る訳ですが、時折、手が届かない場所もあり、已む無く、何度か勝負をかけ、立木に向かって飛びました。
もう、こんなことで勝負を賭けるのは二度とゴメンで、アックスのピックをバスバス雪面に打ち付け、12本爪の前爪をザクザク蹴り込めたら…、と無いものをねだりつつ登っていました。

最後はコレ。
DSCF3034.jpg

場所は西丹沢「権現山」の北尾根です。

夏道であれば獣のトレースの如く、道があるのですが、この日はこのように雪面をトラバースするかのような状態で、手掛かりはゼロ。
やはり、足を固めるのはチェーンスパイクで、この積雪量では雪面上を撫でるだけ。
斜面に落ちると50mはいっちゃいます。
こんなシチュエーションで、足に12本爪、手にはアックスがあれば石突きを斜面にバスバス刺し込み、かなり安定してクリアできると思います。

この時は、足で雪を除け、足裏で登山道の存在を確認しつつ、クリアしました。
その光景はカッコ悪いですが…、正にカニ、のような動きとなっていました。

上記、私が”アックスが欲しかったシチュエーション”のいづれも、シャフトが長い必要性はない。
むしろ、石突きを雪面に突き立て手掛かりにする、ということであれば、シャフトが長ければ不安定となり、又は、不安定とならないよう、深々と刺し込まなければならない。

もし、杖がほしいのであればトレッキングポールにスノーバスケットを装着しアックスと併用する。

なが~~い、前置きとなってしまいましたが、これが私の、

”エアーテックがほしい!” → その理由づけ → 購入

と至った思考回路です。
”その理由づけ”故に、

シャフトが短い = 合理的

みたいな文章になっておりますが、私は単に”エアーテックがほしい!”という一念だけで文章を綴っています。
冒頭に掲載した、シャフトの長さのお悩みに対する返答で、”長いことの利点”が述べられています。
富士山の斜面のお話し等を伺うと”なるほど!”と思わされもします。
物に万能ということはなく、「ミキヤツ登山教室」さんでは”要はその人の使用目的、目標を考慮してピッケルを選ぶ必要があります”とおしゃられており、もっともなことと思います。
もし将来、積雪期の富士山を私が登るようなことがあるのであれば、シャフト長70cmないし、”ピッケルは手に持って下に垂らしたときに、石突きが足裏10cmでる位のものを選ぶ…”式でアックスを選択すると思います。


*ピッケルバンド換装しました:グリベル「エアーテックエヴォリューション」+モンベル「2ウェイピッケルリーシュ」(ピッケルバンド換装)

カタログデータ

先進的デザインのアルパインアックス。シャフトにエヴォリューションカーブが付けられて岩と雪のミックスルートへ対応する。熱鍛造一体型ヘッド。ロングリーシュ付き。
【サイズ】シャフト長48,53,58,66(cm)
【重量】520g(53cm,リーシュ付き)
【価格】21000円(税込)(*グリベル「エアーテックエボリューション」の最新相場はコチラ

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